【第14話】影、蠢く神域
学院の正門前。
昼の光の下、静かに歩み寄る長身の男。
羅玄――
その声が響いた瞬間、空気が一段階、重く沈む。
「久しいな……この学院の空気も、まだ腐りきってはいないようだ」
(うわぁぁぁ!!!低音……低音の重みが……これは森川智之ボイス案件……!いやもう鼓膜じゃなくて魂が直撃してる……!)
学院生たちのざわめきの中、羅玄の視線がまっすぐ璃蒼に向く。
「……“鍵”の片割れ。ようやく目覚めの兆しが見えるな」
(いや初対面で設定把握済みだし距離感ゼロだし、しかも声がやばい……この人、絶対ラスボス枠……!)
* * *
その場を見守っていた冥珠が、静かに歩み寄ってきた。
微笑みながらも、その瞳には鋭い光が宿っている。
「……璃蒼殿。ひとつ、忠告を差し上げましょうか」
「忠告?」
「あなたがその鍵を開けるとき……“誰”を閉じ込めることになるのか、それを考えておくことです」
(待って……低めで透き通るのに刺すような声……石田彰さん案件……!あの囁き系で皮肉混じりとか心臓に悪い!耳が幸せ通り越して魂を持ってかれる……!)
冥珠は一礼して、そのまま去っていく。
その背中から漂うのは、計算され尽くした優雅さ。
(あの余韻……絶対リピート再生不可避)
* * *
夕暮れ、学院の鍛錬場。
朱蓮は一人、木刀を振るっていた。
「……クソッ」
その瞬間、朱蓮の背中から赤黒い霊気が噴き出す。
(えっ、あれって……封印の霊印!?)
「離れろ! 近くに来るな!」
その声は、低く艶やかで、しかし鋼のような怒りを孕んでいた。
(やばいやばいやばい……これは諏訪部順一ボイスの低音咆哮モード……!耳にかかる色気とドスが同居してるやつだ……!)
霊気が渦巻く中、朱蓮の瞳が金から血のような紅に変わる。
「……っ……くそ……!」
(あの苦悶混じりの吐息……完全に作画も声も最高潮……!)
* * *
その混乱を、屋根の上から見下ろす羅玄。
「ほう……封印が軋むか。面白い。やはり、この学院は――まだ遊べそうだ」
夜風に長髪が揺れ、月明かりにその眼鏡のレンズが反射する。
「羅玄…」
(やめてそのラスボス感全開の不敵な笑み……森川低音+間の取り方の破壊力やばすぎ……脳内スクリーン崩壊する……!)
そして、学院の夜が一層深く沈んでいった。