表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

【第1話】「目覚めたら、美形に囲まれてたんですが。」

パンが好きで、声が好きで、2次元の美形が大好物。

だけど何より大切だったのは――

初孫・すーちゃんの笑顔と、家族の何気ない日々だった。


高城由美、五十七歳。

持病もなく、元気だと思っていたその日。

突然見つかった悪性腫瘍は、もうどうにもならなかった。


──あっけない最期だった。

せめて、あと少しで結婚だった息子の門出を見たかった。

すーちゃんの「ばぁば」って笑う声を、もっと聞きたかった。


そんな思いを胸に閉じた目を、ふたたび開けると……

そこは美しい山河と霊気あふれる異世界「玄辰仙界」。

見知らぬ男たちが自分を囲み、呼ぶ声は低く優しく、

その視線の先にいたのは、琥珀の瞳を持つ美しい青年だった――。


魂はそのまま、容れ物だけが若くなって。

私は、第二の人生をもらったらしい。


不思議な力、仙術、そして学院での学び。

人ではない存在たちとの出会い。

過去を持ち、それでも今を生きる者たちとの絆。


これは、人生の続きをもらった一人の“元・おばさん”が、

もう一度「好き」を胸に歩き出す物語。



美しき仙界で、心を取り戻していく――

中身オタクおばさん、外見イケメン。

異世界で始まる、ちょっぴり切なく、優しい再出発。

 病室の天井って、どうしてこんなに味気ないんだろう。

無機質な白い天井をぼんやりと見つめながら、私はうっすらと思った。

まぶたが重くて、身体も重くて、だけどなぜか、頭の奥だけが妙に冴えていた。


——ああ、やっぱりもう、だめだったんだな。


末期の悪性腫瘍。

見つかった時にはすでに転移していて、医師に言われた余命は“半年もてば良い方”。

人生って、本当にあっけない。


「……すーちゃん、元気に育ってね」


唇を動かしたつもりだけど、声にはならなかった。

孫のすーちゃん、まだ二歳の女の子。つい先日も、手を握って「ばあばだいすき」って言ってくれた。

可愛い盛りだったのに。もっと、一緒にいたかったなぁ。


娘も、嫁いで幸せそうだった。

息子はまだ独身だったけど、付き合ってる彼女と結婚間近だって聞いてた。

もう少しだけ、この世にいたかった。


 パンも、HYDEのライブも、藤井風の新曲も、吉沢亮のドラマも。ICBの新作、買いたかった。コーヒーの新しい豆もまだ試してなかった。

なのに——

最期の最期に、こんな未練ばかり思い出すなんて。


 目を閉じようとして、ふと思った。


「……私、もう死んじゃうの?」


 ——次の瞬間。


「……目が覚めたか」


低く響く声が耳に落ちた。

それはまるで、重く、しっとりとした音楽のような声だった。

聞き覚えがない。だけど、どこかで聞いたような……?


……いや、それよりも、なんで?


……え? えっ、えっっ!?


目の前に、イケメンがいた。


しかも1人じゃない。

見渡せば——


・金赤の瞳に鋭く流れる黒髪、長身で威圧感のある武人タイプ

・涼しげな目元、儚げなのに芯の強そうな書生タイプ

・無口そうだけど体格ががっちりしてるワイルド系

・うさんくさい美形の微笑み、口元には扇子

・そして、まるで仙人のような落ち着きと威厳を湛えた白銀の髪の男


(……え? え? なにこの並び? え、乙女ゲー? 乙女ゲー??)


混乱して起き上がろうとすると、身体が軽い。

軽すぎる。関節の痛みも、肩こりも、胃の不快感も、何もない。


まるで若返ったみたい。

いや、ていうか……


「……この体……誰? え、私!?」


鏡が目の前に差し出される。


——そこに映っていたのは、

美しすぎる顔立ちの長髪青年。

くっきりした二重、鼻筋が通って、目元が涼しく整っている。

肌は白く、唇は薄く、どこをとっても“美形オブ美形”。


(なにこれ……私、イケメンになってるじゃん……⁉)


「……名を問おう。そなた、何者だ」


低く艶のある声が空気を震わせる。

響くのは、あの諏訪部順一を彷彿とさせる……どこか妖しく、威圧感のある声。


紅黒の衣をまとった男が、鋭い金紅の目でこちらを睨んでいる。


その男こそ——

朱蓮しゅれん


見るからに“火”を纏う、危険な男。

なのにその声は、背徳的で甘くて、なんだか色気がありすぎて……

(あ……これ、私、間違いなく好きなタイプ)

でもその一方、周囲の空気がざわついていた。


「……お前……」

ふいに、凛とした声が私の耳に届いた。

今度は静かなのにやたらと芯のある、美しすぎる青年の声。


……その声。

どこか、自分のものに似ている気がした。

(いや、まさか。私の声はオバサンだったはず……)

でも、あの声……梅原裕一郎の声にそっくりじゃない?


そしてその声が、私自身の口から発せられたと気づいた瞬間——


「……って、えっ!? 私の声が梅原裕一郎⁉」

(※心の中の絶叫)


これは確定した。


中身は元腐女子オタクおばさん・高城由美(57歳)

でも、姿は若くて美しい“璃蒼”というイケメンになっていて、しかも声まで推し声優(梅原裕一郎)仕様。


 そのうえ、周囲には諏訪部順一・櫻井孝宏・速水奨・宮野真守・津田健次郎ボイスの仙人たち。


(これ……神様、課金しすぎじゃない⁉)


こうして私は、推し声・推し顔・推しシチュに囲まれた美形だらけの異世界・仙界ライフをスタートすることになったのだった。

ここまでお読みくださり、本当にありがとうございました。


転生ものは数あれど――

「中身は57歳のおばさんで、元オタク、でもイケメンに転生」なんて、

なかなか見かけない設定かもしれません。


けれど私は、年齢を重ねても、何かを好きでいることって、すごく尊いと思っています。

パンでも、アニメでも、声でも、人でも。

それが誰かや何かを繋いで、心を救ってくれることって、実際にあるから。


主人公・璃蒼りそうも、そんな“好き”や“推し”を抱えながら、

仙界という不思議な世界で、もう一度人生を歩いていきます。



実は、作者自身もこの物語に救われながら書いています。

日常の中でちょっと疲れたときに、

璃蒼の言葉や、イケメン仙人たちのイケボ(脳内再生可)に癒されてくれたら嬉しいです。


物語は、まだ始まったばかり。

これから登場するキャラたちにも、いろんな想いと秘密があります。

恋や友情や過去や未練――

ひとつずつ、丁寧に描いていけたらと思っています。


また次回、お会いできるのを楽しみにしています。

感想・お気に入り登録なども、心から励みになります!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ