二十 - 恨縛/蓮浄 凛
あの真実を知った今も、薫が既に死亡していたなんて信じられなかった。あの日、紅白に彩られた体育館で私の隣に座った彼女は、胸元のコサージュに負けないほどの笑顔で私に声をかけてきた。
「よろしくね!」
その日以来、事あるごとにしょっちゅう絡んでくる薫に初めは嫌悪感を抱いてきたが、それがいつしか静かな私を明るく和ませる優しいさえずりになってきていた。あの日々のままの、優しい笑顔のままの薫がそこに立っていた。
「薫…」
問い掛けると、彼女が呟く。
「何処から話そうかな…」
しばしの沈黙の後、先程までの笑顔を消した薫がおもむろに語りはじめた。
「自殺したんだ。そこに居る美里さんみたいに」
美里がたじろぐ。
「私は確かに自殺しようとまでは思ったわけだけど、自分の意思で…」
「大丈夫。それも踏まえて説明するね」
美里を制した薫が再び語りだす。
「私の場合は自分の意思だったんだ。虐めを受けていて、友達が出来ないまま。楽になれると思った。
でもそうじゃなかった。山に縛られて霊としてさ迷っていた時に、同じ年頃の子達が友達と笑い合う声が聴こえてきた。あんなに町と離れてるのに、鮮明と。
『何で私はこんなに辛く悲しい思いをしたのに、あの子達は…!』
そう怒りに震えていると、ある答えに行き着いた。
山の禁忌。弥生さん、解る?」
「もしかして、黄泉返し?」
「言うと思った。けど、残念。私がやったのは禁忌中の禁忌。黄泉代わり。だったんだ」
隣で弥生の吐息が震えだした。怯えている。
私の視線に気付いたのか、弥生が恐怖に引きつる顔のまま説明する。
「黄泉代わりはまさに黒魔術だった。亡くなった霊に生きてる人を自殺させ、代わりに肉体を取り戻させ再び蘇るという禁術だった。最後にそれをやったのは、私の祖母だった。そして儀式の最中に…!てことは…!」
「そう、私があなたのお婆さんに憑依する形で儀式を執り行わさせた。でも、この結果よ!」
薫の声が怒りで震えている。初めて聞く彼女の怒声だった。
「二度も!一人目はあなたの身内だった。蓮浄さん」
私の勘は間違ってはいなかったのだ。




