(Another Side)エピローグの少しあと、魔道具師のつぶやき
後日談までいかない、小話的な感じです。
アニスとハロルドが、庭園でこれからについて話をしていた、そのころ。
一足先に図書室に戻ったオズワルドは、机の上で解呪の方法が書かれている本を開いていた。
「……魔導書の類かと思いきや、まさか古代神話だったとは」
意外なことに、その本は魔法書ではなく、遥か昔に語り継がれた神話だった。
どうやら、呪いを構築した魔法士は、地下迷宮に眠っている王女の愛読書から解呪方法に指定したらしい。
「……この魔法士は、王女の家族か……もしかすると恋人だったのかもしれないな」
そうつぶやきつつ、オズワルドはページをめくった。
解呪の方法が記された部分を探していく。
そして、解呪方法が記載されているというページを開いた瞬間、思わず微笑んだ。
「……なるほど。偶然という奇跡がおきたということですか。――いや、これが愛というのかもしれません」
彼は、納得したように本を広げたまま机の上に置いた。
ハロルドたちを呼びに行こうと、図書館から出て行く。
天窓から射し込む夕日に照らされたその本には、
ひざまずく男性が、女性の手に口づけをしている絵が描かれており、こう記されていた。
『Η αγάπη νικά όλες τις κατάρες(愛は全ての呪いに打ち勝つ)』




