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私のことを(たぶん)嫌いな騎士団長様は、"猫"を拾ったつもりらしい  作者: 優木凛々
第3章 魔法士アニス、見えなかったものが見えてくる

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09.最終日


すみません、先ほど投稿した「あと10日」に、こちらの内容が一部含まれてしまっておりました。

訂正して投稿し直します。

(お読みになるタイミングによっては、こちらを読むのが2回目になる方もいるかもしれません)

 


 しかし、物事とはそうは上手くはいかないもの。



 タイムリミット最終日の夕方。



(なかった……)



 アニスは蔵書庫の中でガックリと肩を落としていた。

 全ての蔵書を探したものの、該当する本は見つからなかった。


 とぼとぼと歩いて執務室に戻ると、ハロルドが手紙を広げて読んでいた。

 顔を見ると、辛そうな顔で首を横に振られる。


 問い合わせた図書館からも良い返事はなかったらしい。



「公爵邸に行こう。オズワルドから何か連絡があるかもしれない」



 ハロルドの言葉に、アニスはなるべく元気に右足を上げた。

 とりあえずカラ元気で自分を保つ。









 ――その後、彼らは馬で公爵邸へと向かった。


 空を見上げると、薔薇色の雲が広がっている。


 それをながめがら、アニスは思った。

 自分が猫になったのは恐らく深夜だから、タイムリミットまであと数時間ね、と。



(わたし……このまま人間に戻れなかったらどうなるんだろう……)



 ため息をつく小さな猫の頭をなでながら、ハロルドが苦しそうな顔をする。


 そして、公爵邸に到着すると、ハロルドが出迎えた執事に尋ねた。



「オズワルドから何か知らせはあったか?」

「いえ、ございません」



 アニスは全身が冷たくなった。

 もうだめかもしれない、と思う。


 ハロルドは息をついた。



「……屋上で待つことにする」

「かしこまりました。お茶と何かつまめるものをお持ちします」



 アニスはハロルドの肩に乗って屋上庭園に上がった。

 夏の気配がする涼しげな風に、草木が静かに揺れている。


 執事がテーブルに軽食やお菓子、お茶を並べると、お辞儀をして去って行く。


 ハロルドが椅子に座ると、アニスをテーブルの上に降ろした。



「ずっと食べていないだろう、少しは食べたらどうだ?」



 アニスは、気丈に「にゃーん」と右手を上げると、クッキーを手に取った。

 ちょっとだけ口をつけるが、全く味がしない。


 遠くに目をやると、太陽が山の間に沈んでいくのが見える。

 チラリと下を見るが、公爵邸に向かってくる者はいない。


 彼女は心の中でため息をついた。



(……これはもう、ずっと猫でいることを覚悟した方が良さそうね)



 奇跡が起こることを期待するより、猫として暮らすことを考えた方が前向きな気がする。

 彼女は現実逃避するように、猫になった時の暮らしについて考え始めた。



(とりあえず、婚約とか仕事とかお金とか、そういう心配がなくなるから楽よね)



 そう考えると、人間に戻るよりも自由で快適な生活が送れる気がする。



(どこに住むのかしら。ハロルドにずっとお世話になるのも悪いから、森で暮らす感じかしらね。食べ物はどうするのかしら。木の実とか食べられるかしら)



 あらぬ方向を見てボーッとするアニスを、ハロルドが辛そうな目で見る。


 そして、太陽が山の間に沈み、周囲が大分暗くなったころ。

 ずっと黙っていたハロルドが口を開いた。



「……もう連絡はなさそうだな」



 アニスは、「そうね」という風に左足を上げると、息をついた。

 顔を上げると、感謝の目でハロルドを見る。


 元の姿には戻れなかったが、彼は本当に尽力してくれた。

 感謝してもしきれない。


 ちょこんと座って頭を下げるアニスを見て、ハロルドが目を細めた。

 そっと手を伸ばしてアニスの頭をなでながら、ゆっくりと口を開いた。



「アニス、君に話がある」




 続く




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