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私のことを(たぶん)嫌いな騎士団長様は、"猫"を拾ったつもりらしい  作者: 優木凛々
第3章 魔法士アニス、見えなかったものが見えてくる
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08.あと10日

 

 固まるアニスの横で、ハロルドが冷静に言った。



「彼女が猫になってから、すでに60日が経過している。つまり、猶予はあと10日ほどということだな」

「……はい、そうなるかと」

「それで、解呪の方法についてはどうだったんだ?」



 オズワルドが別の紙を指差した。


 ―――――


『Σφραγίδα της Μοίρας(運命の刻印)』 第5章 第3幕絵


 ―――――



「解呪方法については、この本の該当箇所に記されている、と明記されていました」



 彼の話では、その場で解呪されるのを防ぐため、魔法書など別の書物で示すことがあるらしい。


 ハロルドが眉をひそめた。



「これは魔法書か?」

「ええ、恐らくは」



 オズワルドによると、この本は恐らく古代書の中でもかなり古い本で、現存しているならば


 ・王宮内にある蔵書庫

 ・王都から1日ほどの場所にある古都の蔵書庫


 の可能性が高いらしい。



 ハロルドはうなずいた。



「分かった。あと10日以内にその本を手に入れよう」



 男性2人はテキパキと動き始めた。

 オズワルドがすぐに古都に向かうことになり、ハロルドは王宮内の蔵書庫を探すことになる


 そんな2人の横で、アニスは右往左往していた。

 何とか落ち着かなければと思うが、ジッとしていられない。



(つまり、あと10日以内に戻らなければずっと猫のままでいることになるのよね)



 今ここで悲観的になってはいけないと思うものの、戻れなかった時のことを考えると、体が冷たくなる。

 戻ったら大変そうだと悩んでいたが、本気で戻れないとなると話は別だ。



 そんな彼女を見て、ハロルドが苦しそうな顔をした。

 そっと抱き上げて肩に乗せると、人差し指で頭を優しく撫でる。



「まだ10日もある。すぐに王宮に戻って蔵書庫を探す手配をしよう」

「にゃあ!」



 アニスは、元気なフリをしながらビシッと右手を上げた。

 ここで落ち込んだらダメだと自分を鼓舞する。



(そうよ、まだ10日もあるんだもの。がんばって探そう)








 ――その日から、アニスは昼夜問わずに蔵書庫に入り浸った。


 ハロルドが蔵書庫に書物を至急探すように依頼をかけたため、司書10名ほどが本を探しにかかった。

 アニスもそれに混じって懸命に探す。


 しかし、蔵書庫が広大なこともあり、なかなか見つからない。



(夜も探そう)



 深夜蔵書庫に忍び込んで、懸命に探すものの、見つかる気配がない。


 オズワルドの方も苦戦しているようで、旅だって4日目に、

「司書を総動員して探しているが、まだ見つかっていない」

 という知らせが届いた。



(古い本だから、もう現存していないのかもしれない)



 そんな不安がよぎるものの、アニスは黙々と本を探した。

 自分にできることは、これだけだということが分かっているからだ。


 その間、ハロルドは他の街にある図書館に手紙を出し、その本がないか確認をしていく。


 寝る間も惜しんで探しながら、アニスは思った。

 最終日にひょっこり出て来たりして、「ここにあったのか!」と驚くことになったりしないかな、と。




 ――しかし、物事とはそうは上手くはいかないもの。



 タイムリミット最終日の夕方。





続く



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