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私のことを(たぶん)嫌いな騎士団長様は、"猫"を拾ったつもりらしい  作者: 優木凛々
第3章 魔法士アニス、見えなかったものが見えてくる

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04.次の一手

 

 オズワルドに石碑の解読を依頼した、翌日の朝。


 アニスは、ハロルドと共に再びウィンツァー公爵家を訪れていた。

 地下の研究室に降りて行くと、頭に寝癖のついたオズワルドが出て来た。



「お、おはようございます、さっそく始めましょうか」

「よろしく頼む。夕方になったら迎えに来る」



 ハロルドが心配そうな顔で出て行ったあと、オズワルドはさっそくアニスを調べ始めた。

 計りに乗せて体重を計ったり、何か不思議な道具を使って魔力の状態を調べたりする。


 その後、オズワルドが紙を見ながら質問を始めた。



「石碑についてですけど、石碑から魔力を感じましたか?」



 アニスが、はい、と右足を上げる。



「なるほど。では、その量は膨大でしたか?」



 アニスが、再び右足を上げる。



「どのくらい膨大でしたか?」



 アニスが、このくらい、という風に、大きく手を広げてみせると、

 オズワルドが「ふむ、相当だったようですね」とつぶやきながら何かをメモする。




 ――そして、時々休憩を挟みながら質問をし続けること、数時間。


 質問攻めをされて、ややぐったりしているアニスの前で、オズワルドが真剣な顔で紙束をながめた。



「……やはり非常に強力な呪いのようですね」



 彼の話では、強くない呪いであれば、解呪の方法があったらしい。



「古文書によると、かかっている呪いに他の呪いや誓約を上書きする、なんて方法もあったようですからね」



 しかし、アニスのかかっている呪いは、そんな生易しい方法で解けるものではないらしい。



「ただ、悪いことばかりではありません」



 呪いはただかけるだけでは不安定になりやすく、解呪条件を設定することでより強固な魔法になるらしい。

 ここまで強力な呪いということは、解呪条件もきちんと設定しているということなので、

 石碑と魔法陣を解析すれば、解呪方法が分かるらしい。



「まあ、見る限り、この呪いを設定した魔法士は相当手練れのようなので、一筋縄ではいかなそうですが」



 そう言いながら、彼は解析を始めた。

 ときどきアニスに質問をしたり、不思議な道具で何かを調べたりする。


 アニスは、オズワルドが解析する様子をながめた。

 思った以上に知識と経験が必要そうだ。


 お昼ごろになると、執事が食事を運んできてくれた。

 アニス用のお菓子と果物と、オズワルド用のリゾットのようなものだ。


 一緒に食事をしながら、オズワルドがボソボソと自分の仕事について話してくれた。

 彼は元々王室付きの研究所にいたのだが、人間関係が嫌で辞めたらしい。



「僕はこの通りあまり人が好きではないから、こんな素敵な場所を提供してくれた公爵様には本当に感謝しているよ」



 今はハロルド様の下について、騎士団の仕事をしており、たまに王宮に卸したりもするらしい。



 彼が今年手掛けたという “音楽再生機”や“魔導ランプ”の話を聞きながら、アニスは思った。

 この人、好きな話になると、どんどん早口になるのね、と。



 そして、昼食が終ると、オズワルドは再び解析に取り掛かった。

 本を調べたり、文字を逆さにしてみたりと、ありとあらゆる方法を試しながら読んでいく。


 その様子をながめながら、アニスは思案に暮れた。

 解読を手伝うことが出来れば、少しはスピードアップできるかもしれないと思ったが、どうやら無理そうだ。



(この件でわたしが出来ることはないわね)



 そして、彼女は、ふと思いついた。

 浮いた時間を使って、今回の崩落事故について調べてみてはどうだろうか、と。


 満月の夜に、ハロルドと話をした時、2人の意見は一致した。



『今回の崩落事故は、偶然ではなく故意である』



 現在、ハロルドが秘密裏に調査しているが、

 アニスも一緒に調べてみたらどうだろうか。



 そんなことを考えていると、階段を降りる音が聞こえてきた。

 振り向くと、口角を上げたハロルドが入り口に立っていた。



「迎えに来たぞ。調子はどうだ?」

「はい。順調です。調べた結果、かなり強い呪いであることが分かりました」



 オズワルドが早口で今日調べて分かったことを報告し始めた。

 ハロルドが時々質問を挟みながら、熱心に話を聞く。


 オズワルドの感覚によると、解読にはあと1,2週間ほどかかるらしい。



「アニスはまた明日も来る必要があるのか?」

「いえ。今日あらかたお聞きましたので、もう大丈夫です」



 ハロルドがホッとした顔をした。

 アニスに「おいで」と手招きすると、優しく抱き上げる。


 そして、考え込みながら、されるがままになっているアニスを見て、不思議そうな顔をした。



「なにか考えているような顔をしているな」

「魔法書を見ていたんで、それについて考えているのかもしれません」

「そうか、ここには珍しい魔法書があるしな」



 アニスが、どうやって崩落事故の調査をしようか考えているとは夢にも思わず、呑気に笑い合う男性2人。


 そして、アニスはハロルドの肩で考え事をしながら、王宮へと戻っていった。






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