表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のことを(たぶん)嫌いな騎士団長様は、"猫"を拾ったつもりらしい  作者: 優木凛々
第3章 魔法士アニス、見えなかったものが見えてくる
30/41

02.地下の魔道具師

 

 古代迷宮から戻ってきて、5日後の夕方。


 アニスを肩に乗せたハロルドが、馬で王城の門をくぐり抜けた。

 そのまま貴族街へと進んでいく。


 アニスは周囲を見回した。

 貴族街はとても静かで、手入れの行き届いた庭に囲まれた豪邸が整然と並んでいる。


 馬を進めながら、ハロルドがアニスに尋ねた。



「このあたりに来たことがあるか?」



 アニスは、「いいえ」の合図に左前足をぴんと上げる。


 ちなみに、今向かっているのは、ウィンツァー公爵家。

 目的は、とある人物に石碑の文字の解読を依頼するためだ。



 帰って来てから丸4日、アニスは石碑の中に入っていた魔法陣を解読しようとがんばった。

 深夜に禁書庫に忍び込んで調べたり、文字の順番を変えてみたりと、一生懸命考える。

 しかし、



(これはわたしの手に負えないわ……)



 調べても分からない記号や、知っている文字も違う形で使われている、など、まるで意味がつかめない。


 悩むアニスを見て、ハロルドが1つの提案をした。

 詳しそうな専門家に相談してみないか、と。



「ウィンツァー公爵家に、古代迷宮好きの魔道具師がいるんだ。前に古代迷宮の地図を貸したことを覚えているか?」



 アニスは「にゃあ」と鳴きながら右前足を上げた。

 よく覚えている。



「その貸主がその魔道具師で、今騎士団の仕事をしてもらっている。魔法陣や暗号に非常に詳しいらしい。変わってはいるが、知識は確かだし、信用もできる」



 アニスは右前足を上げた。

 色々やってみたが、多分これは自分には手に負えない。


 そんな訳で、2人はその人物を訪ねることにした、という次第だ。



 *



 貴族街を通り抜け、2人はひときわ広大な敷地を持つウィルザー公爵家に到着した。


 鉄製の門が開くと、整えられた庭園と噴水と、その向こうに堂々たる石造りの屋敷が現れる。

 正面玄関に差しかかると、使用人たちが一斉に出迎えに現れた。



「お帰りなさいませ、ハロルド様」



 執事らしき初老の男性がお辞儀をする。

 普段住んでいるハロルドの両親と兄は領地に戻っているらしく、今は彼が留守を預かっているらしい。



「オズワルドに会いに来た。図書館にいるか?」

「はい、いらっしゃいます。ご案内いたします」



 2人は話しながら屋敷の中に入った。

 煌めくシャンデリアが飾られており、絨毯も家具も見るからに高そうだ。



(……ザ・貴族って感じね)



 アニスはキョロキョロと周囲を見回した。

 今まで見た貴族の家の中で、断トツに豪華だわ、と思う。


 そんなアニスを肩に乗せたまま、ハロルドは執事と共に1階の奥の部屋に入った。

 そこは大きな図書館で、本の詰まった本棚がたくさん並んでおり、古い本の匂いが漂っている。


 ハロルドは執事に

「ここまででいい」

 と言うと、書架の脇にある木の扉を開けた。

 壁に掛けてあるランプに魔法で明かりを灯すと、それを片手に石造りの階段を降り始める。


 アニスは身を乗り出した。

 階段がかなり下まで続いているのが見える。



(ずいぶんと下に行くのね)



 さっきまでの本の匂いは薄れ、代わりに薬品と金属が混ざったような、実験室のような匂いがしてくる。


 そして、階段の降りた先にある古びた扉の前に到着し、ハロルドがノックした。



「ハロルドだ。開けるぞ」



 ハロルドが扉を開けると、そこには実験室のような部屋が広がっていた。


 中央の広い机の上には実験器具や魔道具がならんでおり、本棚には本がたくさん並んでいる。

 そして、その机に向かって何か熱心に作業している人物がいた。


 白く輝く長い髪に、緑色の瞳、銀縁の眼鏡。

 恐らく30歳前後くらいの男性だ。



(おじいさんかと思ってたけど、意外と若いわね)



 アニスがそんなことを考えていると、彼は顔を上げた。

 ハロルドを見止めると、慌てたように背筋を伸ばした。



「ハ、ハロルド様、お、お久し振りです」



 そして、ハロルドの肩に乗っているアニスを見て、微かに目を見開いた。

 知性と好奇心の目で探るようにアニスを見る。



(あれ? もしかして、わたしがただの従魔じゃないって分かってる?)



 アニスが戸惑っていると、彼は興味深そうな顔で言った。



「……もしかして、今日はそのケットシーについてのお話ですか?」






次話以降に凡ミスが見つかりまして;; 本日はここまでになります。

お読み頂きありがとうございました!

よろしければ、下の☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると大変励みになります ̗̀ ( ˶'ᵕ'˶) ̖́-





ちなみに、アニスが閉じ込められたのは陰謀ですが、呪いで猫になったのは偶然です。

陰謀側は、まさか猫になって逃げ出したとは思っていない感じです。


詳しくは、「EP11:【Another Side】報告会」 を参照ください (*'▽')


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓5月30日書籍発売!『ブチ切れた公爵令嬢、勢いで悪魔を召喚してしまう』
お手に取って頂けると嬉しいです(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)ペコリ。:.゜ஐ⋆*

★各書店サイトはこちら★ 【Amazon】  【楽天ブックス】  【Book Worker】 
ie52c7gqa2qc87vji1om5l509wjf_jrc_f2_lk_7xlx.jpg
― 新着の感想 ―
会話シーンありますが、月が出てないと人の姿に戻れないはずでは...?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ