表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のことを(たぶん)嫌いな騎士団長様は、"猫"を拾ったつもりらしい  作者: 優木凛々
第2章 魔法士アニス、元に戻ろうと奮闘する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/47

10.満月の夜①

 

 翌朝の昼前、アニスは宿屋で目を覚ました。

 宿は貴族も泊まることを前提とした上等な宿で、広々とした部屋に、ふわふわのベッド、重厚な家具が並んでいる。


 アニスは、隣で眠るハロルドを見た。

 疲れた顔をしており、まるで死んだように眠っている。


 壁に掛けられた時計を見上げると、もうすぐ昼になろうとしていた。

 いつもなら、起き出して観光に出掛けるところなのだが……



(もう少し寝てもらおう)



 アニスは小さな声で「にゃーん」と詠唱すると、ベッドの周囲に防音結界を張った。


 静かにベッドから降りると、窓枠に飛び移る。

 外は雨が降っており、濡れた石畳の上を、雨具を着た人々が忙しそうに行き交っている。


 それらをながめながら、アニスはため息をついた。



(どうしよう……)



 宝物庫前の岩石を全てどかすのは容易ではない。

 しかも、宝物庫内にもたくさんの岩石があるから、あと3日で何とかしよう思ったら、相当な無理をする必要があるだろう。


 魔力を過度に使えば、体に大きな負担がかかる。

 このままでは、ハロルドの体が深刻なダメージを負ってしまいかねない。



(何とかしないと)



 何とかして、自分がアニスと伝えたいと思うが、ここ1カ月で散々やって伝わらなかったことを考えると、難しいだろうなと思う。


 魔法を使えないかと考えるが、魔法を吸収する岩石の性質を考えると、それも難しい。



(別に入り口とかないのかな……)



 そして、うんうんと唸ること、しばし。

 彼女は、ふと思い出した。

 そういえば、あの小部屋の空気、迷宮の最奥にも関わらず、妙に澄んでいたわよね、と。

 パラパラと小石が落ちて来た時に、種類が違う小石が混じっていたような気もする。



(もしかして、小さな通気口みたいなものがある……?)



 気のせいだったかもしれないとも思うが、今のこの状況だ。

 探してみる価値はある気がする。


 アニスは、ハロルドの鞄から地図を引っ張り出した。

 小部屋の真上に通気口があると仮定して、それは森のどのへんになるだろうと思案に暮れる。





 ――そして、夕方。


 夕闇の中を、ハロルドが馬を走らせていた。

 今日は満月のはずなのだが、終日あいにくの雨で、雨は止んだものの空は雲に覆われている。


 2人は、いつものように森を抜け、古代迷宮の入口に辿り着いた。

 ハロルドが馬を降りて、いつも通り水を置いたり、魔物除けの魔道具を仕掛けたりする。



(今だわ!)



 アニスはハロルドの肩から飛び降りた。

 たたたた、と森の中へと入って行く。



「待て、どこに行く」



 ハロルドが、慌てて追いかけてきた。

 アニスは彼を振り返ると、「にゃーん」と鳴いて、さらに森の奥に走っていく。


 そして、しばらく行ったところで、



「にゃ!」



 あっさりハロルドに捕らえられてしまった。

 どうやら身体強化を使って本気でアニスを追いかけて来たらしい。



(ちょ、ちょっと早いわよ!)



 両手で捕まえられて、アニスはジタバタした。

 何とか逃げ出そうと必死でがんばる。


 その様子を見て、ハロルドが考えるような顔になった。

 地面にそっとアニスを降ろす。


 そして、しゃがみ込むと、真面目な顔でアニスを見た。



「……もしかして、行きたいところがあるのか?」



 アニスはちょこんと座って、「にゃあ」と鳴いた。

 必死に目で、「お願いだから付いてきて!」と訴える。


 ハロルドはしばらく考えた後、腰の鞄から地図を取り出した。

 2枚のうち、ここ周辺の地図を広げると、「どこだ?」と尋ねる。


 アニスは、もう1枚の迷宮の地図を前足で触った。

 広げてもらうと、元宝物庫のあたりと、森のあたりを、交互に尻尾で、たしっ、たしっ、と叩く。


 ハロルドは眉をひそめて考え込んだ。

 2つの地図をジッと見る。


 そして、もしかして、と言う風にアニスを見た。



「宝物庫の天井を突き破れ、と言っているのか?」

「にゃーん」



 大体そんな感じ! とアニスが鳴く。

 ハロルドは苦笑した。



「悪くない考えだとは思うが、迷宮はかなり深くにあるから難しいと思うぞ。できたとしても、新たな崩落が起きる可能性もある」



 アニスは必死に、にゃあにゃあ、と鳴いた。

 そうじゃなくて、通気口があるのよ! と必死に訴える。


 アニスの懸命な訴えに、ハロルドは思わずといった風に口角を上げた。

 手を伸ばして彼女の頭を優しくなでる。



「分かった。行ってみよう。お前は勘がいいから、何かあるかもしれない」



 彼らは一度迷宮入口に戻ると、改めて地図を見た。

 宝物庫の真上の方角を定め、森の中を進んでいく。


 アニスはホッと胸を撫でおろした。

 話の分かる人で良かった、と思う。


 やがて、2人は開けた空き地に出た。

 建物の残骸のようなものがあちこちに散らばっており、真ん中に大きな岩石のようなものが鎮座している。



「このへんだな」



 アニスはハロルドの肩から飛び降りた。

 あちこち歩き回り、中央の岩石の上にぴょんと飛び乗る。


 そして、その隙間をのぞきこむと、そこに小さな穴がぽっかりと開いているのが見えた。

 試しに魔力を少し出してみると、すうっと吸い込まれていく。



(ここだわ!)



 アニスは小躍りした。

 この魔力を吸われる感じ、この下にあの石碑があるに違いない。


 アニスは興奮しながら、ハロルドに向かって「にゃあ!」と叫んだ。


 建物の残骸を調べていたハロルドが顔を上げた。

「どうした」と言いながら、歩いてきて、穴を見て目を見開いた。



「これは……、もしかして、下につながっているのか?」

「にゃあ」



 アニスは得意げに鳴いた。

 これでハロルドが無理をしなくて済むわね! と思う。



(わたしも石碑が調べられるし、これで解決だわ!)




 ――と、そのとき。


 ふっと、雲間が割れた。

 満月が顔を出し、銀色の光が空き地を照らし出す。


 その瞬間。

 アニスの体に、熱いものが駆け抜けた。



 ボンッ!



 何かが爆発するような音がした。



(えっ!? な、なに!?)



 アニスは、思わず頭を抱えて目をつぶった。

 何が起きたかさっぱり分からない。


 そして、恐る恐る目を開けると、そこには見たこともないほど驚いた顔をしたハロルドがいた。

 信じられないものを見るような目でアニスを見る。


 そして、くるりと後ろを向くと、マントを脱いで後ろ手で差し出した。



「とりあえず、着てくれ」



(……え?)



 アニスはゆっくり自分の手を見た。

 それが人間の手であることを認め、目を見開く。


 そして、視線を落として、自分が裸だということに気が付き、彼女は思わず叫んだ。



「きゃああああああああああ!!」



 近くの森で、バサバサッ、という夜の鳥が空に飛び立つ音がした。







本日はここまでになります。

お読み頂きありがとうございました!

よろしければ、下の☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると大変励みになります(*'▽')


ちなみに、ここでお話は丁度半分。明日から折り返しになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
お互い裸を見てしまっておあいこという
おぉおお~続きが気になります わくわくしながら読んでいます! 続きが気になるので更新早くて嬉しいです♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ