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私のことを(たぶん)嫌いな騎士団長様は、"猫"を拾ったつもりらしい  作者: 優木凛々
第2章 魔法士アニス、元に戻ろうと奮闘する
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07.八方塞がりと突破口

 

 アニスが猫になってから約1ヶ月の昼過ぎ。

 彼女は、ハロルドの部屋で昼寝をしていた。


 今日は、騎士団と魔法士団の合同軍事演習の日で、さすがに一緒に行けないということで、留守番している。


 しばらくして、アニスは起き上がり、大きく伸びをした。



(久しぶりにゆっくり寝たわ。)



 そうつぶやくと、ハロルドが置いて行ってくれた水を飲む。

 そして、彼女は窓の外をながめると、ため息をついた。



(本当は、こんなにゆっくりしている場合じゃないんだけど)



 *



 なんとか人間に戻ろうと、アニスは奮闘を続けていた。

 昼間は昼寝をしたりハロルドと行動を共にし、夜は禁書庫で呪いについて調べる。


 昼夜逆転生活は辛かったが、このがんばりが報われ、つい数日前、彼女は呪いの解呪方法の記載を発見した。



(やった! 見つけたわ!)



 しかし、解呪方法を読み解くうちに、厄介なことが発覚した。




(呪いって、レベルがあるのね)



 レベルが、ごく軽いものであれば満月の光を浴びれば解けるが、重いものほど解呪方法は複雑になるらしい。


 そして、どうやら、姿が変わる呪いは上位にあたるらしく、呪いとセットで設定された解呪方法で解く必要があるらしい。



(……となると、怪しいのは、どう考えてもアレよね)



 古代迷宮の奥にあった小さな不思議な小部屋。

 そこにあった石碑には、何か文字が刻まれており、魔力が内包されていた。

 あの中に、呪いの術式が入っていたのではないだろうか。



(何とかして、あの石碑を調べる必要があるわね)



 そう思ってはいるのだが、猫のアニスにとって、それはとんでもなくハードルが高かった。



(ここから古代迷宮まで、馬で飛ばしても3時間以上かかるのよね……)


 

 しかも、ハロルドと一緒に聞いた報告によると、地下迷宮のあちこちで崩落が起きているらしく、通路が埋まっている状況らしい。



(遠い上に道が埋まってるとか、前途多難過ぎる……)



 石板の裏を見れば呪いが解けるかもしれないが、そもそもたどり着けるかどうかすら怪しい状況だ。



(どうしようかな……)



 アニスが、何とかして古代迷宮へ行く方法はないかと、思案を巡らせていた――、その時。




 ガチャガチャガチャッ



 扉から鍵を開ける音が聞こえてきた。

 起き上がって見ると、扉が開いてハロルドが入ってきた。


 ソファの上にいるアニスを見て、口角を上げる。



「ただいま」

「にゃーん!」



 アニスはハロルドのそばに駆け寄った。

 ハロルドがアニスを抱き上げて、頭を撫でる。



「いい子にしていたか?」

「にゃーん」



 アニスは、大丈夫よ、という風に鳴くと、ハロルドを見た。

 早朝からの演習で疲れたのか、疲労の色が伺える。



(お疲れさま)



 そんな風に思いながら、尻尾でハロルドの手を撫でると、彼はふっと微笑んだ。



「疲れているのが分かるのか」

「にゃーん」



 そりゃそうよ、とアニスが同情するように鳴く。


 ハロルドは、くすりと笑うと、アニスを抱えたままベッドに座った。

 バタンと後ろに倒れると、はあ、と息を吐いた。



「さすがに疲れたな」



 アニスは彼の顔の近くにちょこんと座った。

 ハロルドが手を伸ばして、アニスの背中をそっと撫でると、「温かいな」とつぶやきながら目をつぶる。



(これは相当疲れているわね、今日演習はどうだったのかしら)



 そんなアニスの考えを察したように、ハロルドが今日の演習について話始めた。



「今日は紅白に別れて模擬戦を行ったんだが、とにかく第2魔法士団の調子が悪かったな」



 どうやら、いつも異様な強さを誇る第2魔法師団が、ボロボロだったらしい。


 アニスはため息をついた。

 いろんなところで迷惑をかけている、と考える。


 軽く落ち込むような顔をするアニスを、ハロルドがじっと見つめる。

 そして、軽く頭を撫でると、穏やかに言った。



「明日から8日間休暇を取ったんだが、一緒に旅行に行かないか?」



 彼によると、休暇がたまっているのを消化することにしたらしい。


 アニスはきょとんとした。

 ハロルドと言えば、観劇とか乗馬のような貴族的趣味のイメージで、旅行するイメージがなかった。



(どこに行くのかしら?)



 首をかしげるアニスに、ハロルドが微笑んだ。



「南の街に、有名な料理屋がたくさんあるそうだ。そこに行って、ついでに例の古代迷宮跡の様子を見てこよう」






本日はここまでです。

お読み頂きありがとうございました。

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