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私のことを(たぶん)嫌いな騎士団長様は、"猫"を拾ったつもりらしい  作者: 優木凛々
第2章 魔法士アニス、謎の同居生活を始める
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05.フェリクス殿下


本日、未投稿文の差し替えなどを行っていたところ、うっかり前バージョンを投稿してしまいました。

訂正して再投稿します。m(_ _)m


 

 話がある、と言われた5分後。


 ハロルドは、フェリクスの後をついて庭園を歩いていた。


「そろそろ仕事が始まりますので」


 とやんわり断ったのだが、


「私が誘ったことにしておけばいいだろう? 私は君と話したいんだ」


 と返され、渋々付き合う羽目になっている。



 2人の後をこっそり付けながら、アニスの腹の中は煮えくり返っていた。

 フェリクスが、アニスに対して婚約解消を申し出ろと迫ったり、自分に有利な嘘情報を流していることなどを思い出して、後ろから猫キックを食らわせたい気持ちになる。


 そんな物騒なことを考えている猫が後ろから付けているなど露知らず、フェリクスは大きな木の下で立ち止まった。

 振り返って、ハロルドを見ると、ゆったりと微笑みかけた。



「アニスが行方不明になってから3週間ほど経ったが、最近の捜索の具合は聞いているかい?」



 ハロルドは表情を崩さず、淡々と答えた。



「現在、魔法士団と鉱夫が捜索を進めていると聞いております。進捗については、思わしくないとも」



 フェリクスは、悲しそうな顔を作った。



「ああ、そうなんだ、あまり良い結果が出ていなくてね」

「殿下におかれましても、ご心配なことと拝察します」

「ああ、アニスは私の大切な婚約者だからね。最近は、心配で夜も眠れないよ。なんとか無事でいてくれたらいいのだけど」



(大切な婚約者!? 心配で眠れない!? どの口が言っているのよ!)



 アニスは怒りに震えた。

 白々しいにもほどがある。


 そんな中、ハロルドが静かに口を開いた。



「そういえば、アニス・レインが婚約解消を望んでいたという噂は耳にいたしました」



 フェリクスは、少し眉をひそめて、ため息をついた。



「それに関しては、彼女のプライバシーに関わることだから、私の口からは言わないことにしているが……」



 フェリクスは寂しそうに目を伏せた。



「……彼女はもともと、この婚約に前向きじゃなかったからね。色々思うところがあったのだろう」



(っ! こんの嘘つき!)



 アニスは体中の毛が逆立つような怒りを覚えた。


 なぜフェリクスがハロルドと話がしたいのか疑問だったが、今ようやく分かった。

 フェリクスはこうやって色々な人に話をして、アニスが悪いということを広めているのだ。



(そうだわ、こういう手を使う人だった)



 いかにも貴族的なやり口に、嫌悪感を覚える。


 アニスにそんなことを思われているなど露知らず、フェリクスがため息をついた。



「3か月探してくれとは頼んだけど、実のところ半分くらい諦めているんだ」

「……それはなぜですか?」

「元宝物庫には、魔力を吸収する性質があるらしいじゃないか。さすがのアニスも魔法が使えないんじゃ生き延びるのは難しいんじゃないかと思ってね」



 アニス、眉をひそめた。



(……なんでそんなこと知ってるの?)



 元宝物庫に魔力が吸収されるなんて、アニスもやってみなければ分からなかった。

 そもそも、一緒にいた新人魔法士が「アニスは入口付近で行方不明になった」と報告をしているのだから、誰も元宝物庫で行方不明になったなん知らないはずだ。


 ハロルドが、静かに尋ねた。



「……彼女が行方不明になったのは、入り口付近だと聞いていますが」



 フェリクスは、ほんの一瞬目をそらすと、微笑んだ。



「そうだったかな……色々聞いていて、記憶が曖昧でね」



 アニスの胸に、疑念が広がった。

 新人魔法士の嘘に、フェリクスの態度。

 自分の知らないところで、何かが起こっている気がする。


 そっとハロルドを見上げると、涼しい顔はしているものの、何か考えていることが見て取れた。



(そうよね、やっぱり変よね)



 ハロルドが冷静に口を開いた。



「お話はもうよろしいでしょうか。そろそろ仕事に向かいたいのですが」

「ああ、そうだね。引き留めてしまって悪かったね」



 そして、ハロルドが「私はこれで」と礼をして、歩き出そうとした――、そのとき。



「フェリクス様!」



 横から明るい声が聞こえてきた。


 声の方向に目をやると、そこには以前会ったことのあるフェリクスの浮気相手――ピンクブロンドのカトリーナが侍女を引き連れて立っていた。



(うわ……)



 アニスはため息をついた。

 今日は、会いたくない人に会う日らしい。


 彼女はフェリクスに近づくと、甘えるような笑みを浮かべた。



「フェリクス様、これから会議ではなかったのですか?」

「少し話をしていたんだ。君はどうしてこんなところに? 帰ったじゃなかったのか?」

「はい、お庭を散歩して帰ろうと思いましたら、偶然フェリクス様を見つけたのです」



 フェリクスは親しげに彼女に微笑みかけると、ハロルドの方を向いた。



「彼女はカトリーナ・ラウゼン侯爵令嬢だよ。今は、わたしの身の回りの世話をしてもらっている」

「カトリーナです。以後お見知りおきを」



 カトリーナが、ハロルドへ色気のある目線を送ると、丁寧にお辞儀をした。






すぐ続きを投稿します。

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