第3話 ―竜兮竜兮― ㉑
それから、およそ百五十年の月日が流れた――
新東京大学の研究チームがリンディア湖において生態系調査を行っていた際、湖底300mの地点に、巨大生物の頭蓋骨と思しき断片を発見した。
慎重な作業の末、それは地上へと引き上げられ、新東京大学の考古学研究所が復元を試みた。するとそれは、すでに絶滅したとされる一目竜の頭蓋骨であることが判明したのである。
しかし、そのような遺物がなぜ湖底深くに沈んでいたのか、真相を知る者はもはや存在しなかった。
後日、ニュースを聞きつけた一人の郷土史家が、「その骨はかつてイクドモ村から盗み出されたものではないか」と言う説を発表。調査の結果、その主張は支持され、一目竜の骨はイクドモ村(現イクドモ市)に返還されることが決定した。
かくして魔道士ナルンでもあるところの魔道士アイロンは、相棒オーシの眠る地へと、実に一世紀半ぶりの帰還を果たしたのであった。
〈竜兮竜兮 完〉
裴啟 《語林》曰:鄧艾口吃,常云艾艾。宣王曰:「為云艾艾,終是幾艾?」答曰:「譬如鳳兮鳳兮,故作一鳳耳。」(『太平御覽』「人事部一百五 訥」)
裴啟の『語林』には、こんな話が載っている――
魏の鄧艾は吃音があり、自分の名前を「艾……艾……」と繰り返してしまう癖があった。
ある時、上司である司馬懿がふざけて言った。
「艾……艾……と言うが、結局、艾(お前)は何人いるのかね?」
すると鄧艾は、こう答えたのである。
「たとえば『論語』には、『鳳よ、鳳よ』とございますが、いくら繰り返し唱えたところで、その鳳は一羽きりにございます」




