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魔道探偵ナツメ事務所  作者: 吉田 晶
第1話 ―家出娘と猫と指輪―

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―家出娘と猫と指輪― ④

 喋る猫に導かれてたどり着いた先――

 そこは確かに、湾岸倉庫地域の一角だった。


 しかし、船着き場から距離があるため、倉庫自体の数は少ない。代わりに、港で働く労働者や、彼らを客とする露天商たちが住むバラックが乱立していた。


 限られた土地にできるだけ多くの人数を収容しようとした結果、道幅は狭くなり、人がすれ違うのがやっとという有様。さらには無計画な増改築が繰り返されているため、一帯はまるで迷路のような様相を呈していた。



                § § §



 ナツメとユースケが潜んでいる物陰に、小さな影が音もなく入り込んできた。

 偵察に行っていたミーシャが戻ってきたのだ。


「中に4人全員そろっているわ。1階に3人、例の魔道士は2階にいて、お香を焚いてリラックスタイムを満喫中だから、今がチャンスかもしれない」


「あいよ!」とナツメが応えれば、ミーシャも「にゃん!」と一声鳴いて、


「それからアイラスは、1階の大きな部屋の隅にあるソファーの上にいる。縛られているけど無事みたいね」

「了解。それじゃあ、話をつけに行こうか。万が一あたしたちに何かあったら、ミーシャは適当に助けでも呼んできて、ええと……」


「ここだと統領府が近いから、そこに駆け込むのが一番かな」


 ユースケはナツメの言葉を引き継ぐと、北西に見える白亜の殿堂を指さした。


「あそこに見える建物の守衛所で、『ナツメ事務所の関係者です』って伝えてもらえれば、誰か話のわかる人に繋いでもらえると思います」


 そして、ナツメの方を向き直ると――


「それより何度も言うけど、ナツメさん、やり過ぎないでよ。今回はアイラスさんの事情もあるから、できるだけ穏便にね」

「ハイハイ、ガンバリマ~ス」

「うわっ、腹立つ……なにその不真面目な返事!? 昭和のパ・リーグの不良助っ人外国人選手だってもう少しマシな返事をするよ!? ちょっと、聞いてる!?」

「ハイハイ、ワカッテマ~ス」


 ユースケの小言を背に受けながら、ナツメはすでに歩き出していた。

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