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「はじまりのおしまい」
「かくして、ナツメと雄介は異界の地へと足を踏み入れた。
栄光、破滅、愛、裏切り……
魔道栄える地に、彼らが見出すものとは、一体――」
「ちょっとユウちゃん。今のナレーション、何よ?」
「いや、盛り上がるかな~って思って」
「この非常事態にけっこうヨユーあるじゃん……」
「いや、あまりにも現実味がないからさ。どうしたものか困惑しているだけ」
「くやしいけど、それ、ちょっとわかる」
いまいち緊張感に欠けるナツメと雄介。
しかし、この時は知る由もなかった。
彼らの行方には、百と一つの冒険が待ち受けていることを。
ついには二人が「魔道探偵の祖」として語り継がれる存在となることを――
だが、それはまた別の物語である。
「ん、ユウちゃん、また何かナレーションしてた?」
「いんや、僕じゃないよ」
「……ふぅん。まあ、いいや」
(プロローグ 了)




