#1 いつもと違う明晰夢
明晰夢、それは脳が半覚醒時に起こる現象である。
佐藤ユウキ、男子高校生。
なんの取り柄もない俺は、明晰夢を自由自在に見ることができることだけが特技だった。しかも見る夢は毎回同じ、人物も同じ。だが俺のことは毎回初めてその町に行く旅人のように扱われている。いわゆるNPCのような扱いだ。
だから、現実ではできないあんなことやこんなこと、何でもし放題な夢を見るのがとても好きだった。
今日も学校から帰ってゲームをし、気づけば24時。
「さぁ、今日も寝るか」とパソコンをシャットダウンし、ベッドに入る。
「今日もやりたい放題するか」
と思い瞼をこすりながらいつものようにワクワクしながら入眠へ。
しばらくすると眠りにつき、いつもの夢を見る。
しかし、今回は何かが違う。いつもよりも鮮明かつ地に足がついている。
聖地フェイリオ、いつも夢を見ると訪れる町の雰囲気がなぜか違う。
「お、ユウキ!」
話しかけてきたのはいつも話しかけてくる武器屋のグウィル。
「あれらしいぜ?ユウキがなんでもできてこの町で一番強いから、王女様がおよびになってるぜ?」
おかしい・・・。いつもなら「ユウキ!武器買っていくか?」というだけのNPC的存在のはずだ。
俺は一回目を覚まそうと思い、いつものように右手の親指と薬指をくっつける。
・・・・・・・起きれない。なぜ。
いつもならこのルーティンで起きれるはずなのに。
何回、何十回と試す。が無理だ。
それを見ていたグウィルが「あのさ、今回はお前の意思じゃもどれないぜ」とすべてを知っているかのように囁いた。
「お前がなんでも出来て強いから王女様が目を付けたんだ、このことを知ってるのは俺と王女様だけだぜ。」
このグウィルの言葉で違和感が確信に変わった
「夢にとらわれた、、、いや夢という異世界にとらわれたんだ」と。