INNOCENCE
レビュー執筆日:2022/2/9
●「壮大」でありながらも、「聴きやすさ」や「風通しの良さ」も兼ね備えたアルバム。
【収録曲】
1.introduction
2.Visitor
3.歪んだ光
4.Rebirth
5.灰色の街
6.Link (instrumental)
7.ALE
8.素晴らしき世界
9.夜のために
10.innocence
11.ファンファーレ
個人的には、ACIDMANというバンドには「迫力のあるロックサウンドと壮大な詞世界が魅力的であるものの、その世界観が完成され過ぎていてアルバムの雰囲気が毎回似たような感じになってしまう」という印象を持っていました。ただ、今作は切り裂くようなギターリフが印象的なハードなナンバーの『歪んだ光』やポップで軽やかな雰囲気のある『ALE』、穏やかなアコースティックギターの音色が特徴的な『素晴らしき世界』やトランペットを導入した『ファンファーレ』のようにいつにも増してバリエーション豊かな楽曲が約45分という程良い長さにまとめられており、従来の彼らの作品と比べて非常に「聴きやすい」感じで、それによってある種の「マンネリ感」が解消されているように思えました。
とはいえ、別段「ACIDMANらしさ」というものが薄まったような印象は一切ありません。例えば、今作には彼らにしては珍しくアニメのタイアップが付いた『Rebirth』という曲があり、歌詞の内容は平たく言えば「応援歌」といった感じなのですが、「灰色の街で生まれたんだ」や「僕らは透明な心でいたかったはずさ」といった普遍的な言葉を上手く用いたフレーズからはしっかりと彼ららしさというものを感じ取ることができます(『Rebirth』の1つ前にリリースされたシングルのタイトルがまさしく『灰色の街』でしたし)。
この曲以外にも、「太陽がくれた命さ」(VISITOR)や「世界は歌に成ってゆく」(灰色の街)、「この星に 生まれて 消えてゆく それは美しい事さ」(ファンファーレ)といった「普遍的」なフレーズが至る箇所に存在し、それが壮大な世界観となって今作を形作っていると言えるでしょう。まあ、彼らのアルバムは今作に限らず常に(特に『and world』以降は)こんな感じなので、言い方を変えれば「似たようなことばかりを歌っている」ということにもなりますが、先程挙げた通り、今作は曲調自体のバリエーションが豊かで「過去の楽曲の焼き直し」と思える要素もほとんど無く、そういう意味では上手くバランスが取れている印象がありました。
彼らの強みをしっかりと活かしつつも、これまで以上に「聴きやすさ」や「風通しの良さ」も感じられるアルバム。タイアップ等をきっかけに彼らを最近知った方にも、私のように完成され過ぎた「世界観」をやや食傷気味に感じていた方にも是非お薦めできる作品になっていると思います。
評価:★★★★★