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The Doctor's Diary-001

二〇七一年 十一月 十一日


 ついに……ついに、獣人を生み出すことに成功した。私がアルにこの研究をしたいと話してから、実に十年が経っていた。

 産声を上げることなく培養カプセルからひっそりと生まれ落ちたのは、ブルーグレイの毛並みが美しい、ロシアンブルーの青年だ。毛の色には、ひどくこだわった。そのせいで、誕生が一年遅れたと言っても過言ではない。


 だがその髪を見る度、触れる度に、思い出してしまう顔がある。……いや。語弊があるな。濃密な五年間を過ごした筈なのに、もう顔は思い出せない。

 最後に見た、汚いものを見るような冷たいまなざしだけが、脳裏に何度もフラッシュバックする。


あるいは……[インクの滲んだ痕]


 ベンジャミンは、私の理想のペットだ。理想とする要素を詰め込んだ。愛さないという選択肢はない。

 それなのに。彼が無邪気に笑う度、そのピュアな心を踏みにじりたくなるのは、何故だろう……。

 愛しているのに。彼のブルーグレイの毛並みを見ると、衝動的に彼を傷付けてしまいたくなる。

 尻尾を踏みつけ、ピアスをむしり、私の与えた首輪を締め上げて、許してくれと懇願するまで泣かせたくなる。


 私は……狂ってしまったのだろうか? それともすでに十年前、狂ってしまっていたのだろうか?

 もしそうだとしたら、狂った私の作ったペットも、まともではない。

 この腐りきった世界ではそれもまた一興なのかもしれないが、不具合があるのだとしたら、私もベンジャミンもいずれ、マウスでゴミ箱にドラッグ&ドロップされる運命なのだろう。

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