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たらこのホラー小説作品集

パニック全部乗せの壊滅した世界で、俺はなんとしてでも目的を果たす

 人類は滅亡します。


 何故なら未知のウィルスがパンデミックを起こし、空からは敵対的な宇宙人が飛来し、海からは未知の怪獣が現れ、街はゾンビであふれ返り、各地で火山が大規模噴火を起こし、マグニチュード9を記録する地震が発生してその影響で津波が押し寄せ、巨人や悪魔や鬼が人を食い荒らし、進化したサルが反乱を起こして動物園から逃げ出し、あとはキノコとかサメとか触手とか……。


 そんな世界でなんのチートもない状態でどう生き残るか。

 俺は偶然たどり着いたアパートの一室に引きこもりながらひたすら考えていた。






「ざーっ」


 テレビをつけても何も映らない。

 テ〇東ですら映らない。


 ネットも繋がらない。

 本格的にだめかもしれない。


 外を見るとゾンビの群れ。

 故障した車が転がり、アスファルトにはひびが入っている。

 最近は窓すらろくに開けていない。


 日本を襲った未曾有の大災害。

 宇宙人が飛来して各都市を攻撃。

 追い打ちをかけるように巨大怪獣来襲。

 米軍と自衛隊は必死に応戦したが、抵抗虚しく各都市は焼け野原に。


 ゾンビウィルスが蔓延し始めてからテレビもラジオも放送が止まる。

 さらには謎の鬼、悪魔、巨人が現れて人々を捕食し始めた。


 俺はたまたま逃げ出せて無事だったが、命を落とすのも時間の問題だろう。

 どうやって生き残るか考えねばならぬ。


 とりあえず日記をつけることにした。

 最初のページに俺が真っ先に達成すべき目標を書き込む。

 この目的を果たさない限り俺は死ねない。

 生まれて来た意味がない。






 ということで、今後の生存戦略を練る。


 真っ先に考えるべきは飲料水の確保。

 アパートの住人たちから略奪を行い、できる限りの水を手に入れることにした。


 警察がすでに機能を停止しているので、ベランダ伝いで隣の部屋に侵入しても誰も怒らない。


 物をとっても文句を言う輩は一人もいない。多くの住人たちはすでに避難所へ逃げており、自衛隊の指示に従ってどこかへ行った。

 残っているのは偏屈な年寄りだけ。

 彼らは若者と違って力が弱く倒しやすいので、軽く撃退できた。


 略奪品が少しずつ集まって行く。

 しかし、水は思うように集まらなかった。


 やはり、アパートを出て物資を確保しないといけない。






 俺は自家栽培をすることに決めた。


 幸い、アパートの住人の中には家庭栽培をしている奴もいて野菜の苗が手に入った。ついでに土と種も。

 園芸用品は揃ったわけだが、肝心の水がない。

 これは雨を期待するしかないなぁ。


 屋根の上に大量にタライやバケツを並べることにした。

 頼むから雨よ振ってくれと願いながら、幸運の女神がほほ笑むのを待つ。


 数日後、雨が降った。

 しばらくは水の確保は問題なさそうだ。

 しかし……食料が底をつき始める。


 電気が通っていないので、生ものや冷凍食品は全滅。

 仕方なく、手に入った保存食で食いつないでいく。


 外部との連絡を取る手段はないが、ラジオは毎日チェックする。

 どこかの物好きが放送をしているのではないかと期待したが、残念なことにざーざーという音が聞こえるだけだった。


 早く人がいる場所を突き止めなければ。






 さらに数日後。

 いよいよもって食糧事情がヤバイことになる。


 このままではまずいと思った俺は、思い切って遠征することにした。


 倒れた電柱にかかる電線を伝って少しずつ移動していく。

 下ではゾンビたちがうーうー言いながら徘徊をしているのが見える。


 数日間にわたる観察の結果、ゾンビにも色々と種類がいることが分かった。


 音に反応するタイプ。

 匂いに反応するタイプ。

 目視して標的を確認するタイプ。

 知能がある奴。

 道具が使える奴。

 コミュニケーションが取れる奴。


 色々いるが、全部の種類に共通することは、生きた人間に問答無用で襲い掛かって来るということ。

 ゾンビにも色々と派閥があるようで、共食いをしている光景をよく見る。


 俺は外へ出るにあたって、手に入れるべきもののリストも用意した。


 最優先で手に入れるべきものはカロリーの高いおやつ類。

 そして清潔な水に、塩と砂糖。

 できればタバコなどのし好品も確保したい。

 あと、人間の女の裸が写されている雑誌とかも。


 手当たり次第に近所の家に侵入し、キッチンを漁る。

 敵と遭遇した時は落ち着いて対処。

 相手が一人なら何とか倒せる。


 万が一、鬼や悪魔に出くわしたらその時点で詰み。

 奴らは訓練を受けた軍人が相手にならないほど強い。


 鬼は基本的に動く存在を無差別に襲うので、どこかに身を隠してやり過ごすのがセオリー。

 出会ったら隠れて見つからないように祈るしかない。


 悪魔は……あいつらはコミュニケーションがとれる。

 なので鬼よりも比較的、遭遇した際の生存率が高いような気もするが……実はもっとたちが悪い。

 悪質な内容の契約を迫り、断ったら拷問して殺されるそうだ。


 なので、基本的に目立った行動はできない。

 ひっそりと息をひそめてやり過ごすのが一番。


 定期的に宇宙人がUFOに乗って飛来したりもする。

 奴らは移住することが目的らしい。

 なので、奴らと他の勢力は敵対関係にある。

 もっと言えば鬼と悪魔も互いに敵対している。


 人間がほぼ絶滅に追いやられた今、奴らにとっての敵は他の危険性生命体なわけ。

 俺としてはいい迷惑だ。


 目的の物がある程度揃ったので、俺は帰宅することにした。

 しかし、帰り道の道中で鬼とニアミスしてしまう。


 ゾンビの群れを引っこ抜いた標識で殴り倒す鬼。

 身体には何処からか持ってきた鉄板を括り付けて鎧代わりにしている。


 ゾンビを手当たり次第に潰していく鬼。

 その様子を最後まで見守りたいが、ここにいたら危険そうなので大人しく引き上げることにした。






 さらに数日後。

 ようやく生活が軌道に乗り始めた。


 各部屋のベランダで栽培している野菜が芽を出し、順調に育っている。

 雨水の確保も問題なく行えている。


 チョコレートやクッキーなどの保存のきく食料もある程度確保できたし、缶詰もそれなりに集まった。

 砂糖や塩などの物資も確保も順調。


 しかし……長期的に考えるとこのままではまずい。

 ここにいたら俺の目的はいつまでも達成されないからだ。


 ショッピングモールや学校などの施設への移住も視野に入れたいが……。

 もっと確実に人がいる場所を選ぶことにする。


 俺は山に囲まれた土地への移住を計画。


 自然に囲まれた場所ならゾンビも少ないし、鬼や悪魔に襲われる心配もない。

 万が一敵対者と遭遇しても、森の中の方が戦いやすいからな。

 唯一の懸念は巨人だが……まぁ、何とかなるだろう。


 手に入れた地図を開いて、ルートを確認し、安全に移動する手段を模索する。


 目指すは秩父あたりか?

 それとも奥多摩?

 千葉の南部?

 神奈川も悪くない。


 どこへ行っても人がいるとは限らない。

 明確な目的地はなかなか定まらなかった。






 それからさらに月日がたち、ラジオが放送を受信して避難所の場所が分かった。

 これでようやく計画が実行に移せる。


 俺は目立たないルートをたどって東京からの脱出を試みる。

 大通りはできるだけ避けて鬼や悪魔に見つからないように、こっそりと移動。


 道中で巨大なウンコが落ちているのを発見。

 この先に巨大怪獣がいると判明した。


 怪獣は巨人を捕食して動き回っているらしい。

 出くわしても俺が直接襲われることはない上に、混乱が生じるので移動がたやすくなる。


 俺は予定通りそのままルートをすすんで東京を脱出。

 双眼鏡を覗いて怪獣の存在を探すが、ここら一帯にはいないようだ。

 このまま進んでも問題ないと判断して移動を継続。


 数日間歩き続けた結果、俺はとうとう目的の場所へたどり着いた。


 宇宙人も鬼も悪魔も巨人も怪獣もいない、俺だけのユートピア。

 ようやく安心して暮らせる土地が――




 パァン!




 乾いた音が聞こえる。

 下を見ると、腹部から血が噴き出していた。


 ……え?

 なんで?


 先ほど聞こえた音が銃声であること。

 そして、俺がこのまま死んでしまうことを理解しながら、腹を押さえて叫んだ。


「撃たないで! 俺はニンゲンダヨ――


 続けて放たれた銃弾によって脳天が打ち抜かれ、俺の人生は終わった。






「珍しいタイプでしたね」

「はい……私も初めてみました」


 迷彩服を着た二人の男が死体を見下ろす。


 避難所の近辺にやって来た人間以外の存在は問答無用で射殺することになっている。

 大抵の場合、着の身着のままで偶然やって来た個体が多いが……このように服装を整え、荷物を背負い、武装してやってくるタイプは極めてまれ。


「おや……日記のようなものをもっていますね」

「ふむ、読んでみよう」


 男の一人が日記を手に取り、内容を確認する。


「……やっぱり」


 日記を読んだ隊員は眉をひそめて呟いた。

 1ページ目にはこう書かれている。




『人間 女 孕ませる』




「こんな奴が避難所に入り込んだら大変ですね」

「まぁ……見た目で分かるし、今のところは大丈夫だろう。

 そのうち、姿を人間に似せる奴も出てくるかもしれない。

 ゾンビとは違った脅威となり得る。

 警戒を強めた方がよさそうだな」


 そう言って迷彩服の男は猿の死体をつま先で転がす。


 人間の服装をしたその猿は口惜しそうに表情をゆがめ、息子をビンビンにエレクトさせていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] オチに震えました。 面白かったです。
[一言] 知略企画から伺いました。 オチ!!! (*´ー`*)いや。叫ばずにいられなかった。 実際はどうなのでしょうね…はたして交配して受精して、定着するのだろうか。巨人もいるくらいなら可能な世界…
[一言] 終末世界と化した状況でなかなか不穏なことを言ってると思えば、ラストでなるほどと思わされました。 こんな終末世界にならないようにしないとと思います。
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