コミュニティにおけるお葬式
『貴方の地区において103歳の男性がお亡くなりになりました、ご冥福をお祈りします』
朝っぱらから憂鬱な放送を聞かされてげんなりする。死者は配給に影響が出るので勘弁して欲しい。例えそれが百歳超えのご老人だったとしてもだ。
昔は百歳を超えればかなりの長寿だったらしいが、医療の発展で平均寿命が100歳を超えてかなり経つ。仲間が死ぬのは悲しいことだがこの地下にいるよりはマシなのかもしれないなとは思う。
「お兄ちゃん、おはようございます……また誰か死んだんですか?」
「みたいだな、百歳超えだとさ」
「それだけ生きているならボーナスをくれてもいいと思うんですがね……ペナルティ来るんでしょうねえ……」
「しょうがないさ、人が死ぬのはいつだって悲しいものだろう?」
「それにしてもですよ、人間が生き物である以上いつか死ぬんですよ? 百歳を超えて医療機関にかかりっきりの人が死んだからペナルティっていうのはちょっと酷くないですかね?」
旧世代でもさすがに人類の寿命を克服することは出来なかった。死ぬときは死ぬ、結局病気のほとんどが治療可能になろうが、危険のほとんど無い世の中だろうが、老化から逃れることは出来なかった。
噂によると人類が増えすぎるのを抑制するためにわざと老化を防止する薬品の開発を止めたという噂もある。なんとも皮肉な話じゃないか。
「まあ貴重な人間が一人減ったんだからしょうがないだろう、たとえ何歳であってもな」
「運営は人間が永遠に生きて欲しいとか思ってるんですかねえ」
「割と真面目にそう思ってそうだな」
永遠を目指す人間というのは愚かしいものじゃないかと思うんだがな……現在人間が減少していく世界で一人の人間も減らしたくないというのは理解できる、しかし人間が生きる意味を無くしてでも生き残ろうというのは本末転倒感がある。
人間が争った結果、かつて放棄した技術が必要になるとは皮肉なものだ。それでも……それでも人間は将来があると信じたいのだろう。
「配給、どのくらい減らされると思いますか?」
「さあな……まあそんな大きなペナルティはないだろ、百歳超えまではがんばってくれてたんだしな。精々服が一枚減らされるとかその程度だろ」
「無償でいくらでも生産できるものを減らす意味ってあるんですかね」
「アメとムチって言うしな……」
「まあ反映までしばらくありますし、それまでに人口が増えるのを祈っておくしか無いですね」
その週の配給は食事が五パーセントの減量、国民服が安っぽくなっていたのだった。




