表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/48

バレンタインSS 竜とチョコレート

バレンタインですね。

バレンタインSSを贈ります。ご覧いただけると、嬉しいです。



「これは何?」


 黒い騎士服を相変わらず着込んで、黒い色合いのアルベルト様が、不思議そうに首を傾げた。


「チョコレートです!」


「ちょこれーと?」


 苦労して材料を手に入れたチョコレート。

 時々王都に出かける竜たちに、手紙を持って行ってもらって、ロバート様に代理購入していただいたのだ。


 今、私の手元には、そのチョコレートを使って、苦心して作り上げた、ちょっと形の悪いハート形のチョコが乗っている。


「――――食べたことないな」


「そうでしょう、そうでしょう。王都でも、まだ一部にしか流通してないんです! 手に入れるの苦労したんですよ!」


 そのチョコレートを、転生前覚えている知識をもとに、溶かして固めただけの、艶はなくて形が悪くても、まあ味は王都のショコラティエ保証付きのこちら。ぜひ、アルベルト様に捧げたい。


「どうして、今日、ちょこれーとなの?」


「バレンタインだからです」


「ばれんたいん?」


 ほほ笑む私に、もう一度不思議そうに首をかしげるアルベルト様。

 もちろんこの世界に、そんな風習はない。

 それでも、アルベルト様にもらった、色とりどりの砂糖菓子のお礼は、今日この日でなくてはならない。


「――――好きな気持ちを伝える日なんです」


 ぼそぼそと、小さな声になってしまったのは、許してほしい。恥ずかしいから。


「え?」


 アルベルト様の耳元が赤くなった。

 それを見た私まで、妙に照れてしまって、赤くなる。


「――――ありがとう。うれしいよ」


 素直に、チョコレートを口にしたアルベルト様。

 それを、頬を赤らめながら、ニコニコと見つめる私。


 ――――そこまでは良かった。


「好きだ。かわいい。愛してる。ライラ」


「ち、近すぎます! どうしちゃったんですか?!」


「ほかの竜にくっついたらダメだよ。ほむらもダメ。俺だけのライラで……すやぁ」


 ――――すやぁ?


 そういえば、アルベルト様の顔が赤い。

 いぶかしく思った私も、チョコレートのかけらを一つ口に放り込む。

 とたんに、軽い酩酊感が襲い掛かる。


 まさか、チョコレートが竜にとっては、お酒のようなものだとは。

 

「アルベルトさまぁ……。しゅきでしゅ。しゅきしゅき」


 竜、あるいは竜人たちの口にはまだ入っていなかったらしいチョコレート。


 お酒には強いのに、チョコレートには弱かったらしく、眠ってしまったアルベルト様。

 一方、私はチョコレートを食べた後に、竜の姿になって、たくさんの竜に醜態をさらしてしまったらしい。覚えていないけど。


 残念なことに、チョコレートはアルベルト様に「俺と二人きりの時だけにして」と、事実上禁止されてしまったのだった。


 後日、魔法を使い過ぎた竜人たちが、苦痛を紛らわせるための、蒸留酒の代用品として、竜騎士団でチョコレートが正式に採用されたらしい。

 残念ながら、バレンタインのチョコレートを楽しむのは、私たちには難しいのだった。


「来年は、クッキーを焼こう……」


 夕日に向かって、私は呟いた。

最後までご覧いただきありがとうございました。

下の☆をポチッと押して、評価いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます
本大好き(むしろ本しか興味なし)な男爵令嬢が、竜騎士様の番認定されて、巻き込まれていくファンタジーラブコメです。
― 新着の感想 ―
[良い点] しゅき、しゅき言うライラが可愛いです^_^ さらに独占欲を見せつつ、おねむしてしまうアルベルト様♪ 膝枕でよしよししてあげたいです〜
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ