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第24話 たくさんあるけれど、私の一番は。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 目を覚ますと、まだあの部屋にいた。

 それでも、眠る前みたいな暑さは今はない。

 暑くもなく寒くもないと言ったところだ。


「……アルベルト様?」


 アルベルト様のマントに包まれて、その肩に寄りかかって眠っていたらしい。


 少し離れたところに、竜になった時に、脱げてしまった服が落ちている。


 変身するたびに、服が脱げてしまうの、何とかならないのかな?


 もう、そういう仕様なのだと諦めるしかないのだろうか。


 そういえば、夢の中で、あの美女は、風の魔法を纏ってドレスにしていたわ。あの魔法、なんとか身につけられないだろうか。


「ライラ……」


 竜騎士団長の役目はなんなのですか? とか。

 夢の中で、父が言っていた、竜の血が濃い竜人は、アルベルト様のことですよね? とか。

 それじゃあ、竜になってしまう私は、人の血が濃い竜なのだろうか? とか。

 私の母は、竜なのですか? とか。


 いろいろ、気になることは多い。

 もう、情報過多で、何から調べるべきか選別が難しい。


 でも、そんな洪水みたいな情報の中でも、今、一番解決したいことは、一個しかない。


 たぶん、それが今の私にとって、一番の関心事項で、大事なことなのだと思う。

 だから、私は、眠る直前に決意した言葉を伝えることにした。


「アルベルト様」


「ライラ?」


「…………好きです。アルベルト様」


 拒絶されるのは、とても怖いけれど、伝えずに今のままの距離で満足することもできない。

 それに……。お母様のくれた質問に、私はたった一人の名前しか答えられなかったから。


「好きです」


「――――っ。本当に?」


 あれ? お断り以前に、信じてもらえない?

 やはりこれは、竜の好きを表す鳴き声が、お肉大好きを表す鳴き声と、同じだったせいなのかしら。


「――――お肉とかと一緒だと言われるのは心外です。世界で一番好きです」


「ふっ。……俺は、情けないな。先に言わせるなんて。……俺も好きだよ、ライラ。きっと、ベリア殿から話を聞くたびに、会ってもいないライラのこと、好きになっていった。出会った瞬間から、ライラが俺の一番になった」


「私も、父から聞きたかったです。アルベルト様の話を」


「……竜騎士団に来てから、失敗ばかりで、あまり聴かせたくないな」


 そう言いながらも、大切な思い出を噛み締めるみたいに、アルベルト様は微笑む。


 きっと、ここに来たばかりのアルベルト様は、可愛らしかったに違いない。


 そして、誰よりも努力したのだろう。


 アルベルト様が、私を抱えたまま立ち上がる。

 抱き上げられた肩越しに、宝石と金の装飾がなされた、黒い鞘におさまった剣が、台座に立て掛けられているのが見えた。


 その剣から感じる魔力は、なぜか、懐かしい。


 そこからは、懐かしい、父の気配が感じられた。

 たくさんの竜人たちの魔力を吸ってきたことが、そこから、感じられる。


 一番濃密なのは、アルベルト様の魔力だ。


「……行こうか。ライラ」


 きっと、あの剣が、父やアルベルト様を縛る原因の一つに違いない。


 今、聞いてもきっと、アルベルト様は、困ったように笑うだけで答えてはくれないだろう。それは、何故か、確定事項のような気がした。


 私は、そっとアルベルト様に頬を寄せて、「……はい」と、頷いた。



最後までご覧いただきありがとうございました。


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本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます
本大好き(むしろ本しか興味なし)な男爵令嬢が、竜騎士様の番認定されて、巻き込まれていくファンタジーラブコメです。
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