第24話 たくさんあるけれど、私の一番は。
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目を覚ますと、まだあの部屋にいた。
それでも、眠る前みたいな暑さは今はない。
暑くもなく寒くもないと言ったところだ。
「……アルベルト様?」
アルベルト様のマントに包まれて、その肩に寄りかかって眠っていたらしい。
少し離れたところに、竜になった時に、脱げてしまった服が落ちている。
変身するたびに、服が脱げてしまうの、何とかならないのかな?
もう、そういう仕様なのだと諦めるしかないのだろうか。
そういえば、夢の中で、あの美女は、風の魔法を纏ってドレスにしていたわ。あの魔法、なんとか身につけられないだろうか。
「ライラ……」
竜騎士団長の役目はなんなのですか? とか。
夢の中で、父が言っていた、竜の血が濃い竜人は、アルベルト様のことですよね? とか。
それじゃあ、竜になってしまう私は、人の血が濃い竜なのだろうか? とか。
私の母は、竜なのですか? とか。
いろいろ、気になることは多い。
もう、情報過多で、何から調べるべきか選別が難しい。
でも、そんな洪水みたいな情報の中でも、今、一番解決したいことは、一個しかない。
たぶん、それが今の私にとって、一番の関心事項で、大事なことなのだと思う。
だから、私は、眠る直前に決意した言葉を伝えることにした。
「アルベルト様」
「ライラ?」
「…………好きです。アルベルト様」
拒絶されるのは、とても怖いけれど、伝えずに今のままの距離で満足することもできない。
それに……。お母様のくれた質問に、私はたった一人の名前しか答えられなかったから。
「好きです」
「――――っ。本当に?」
あれ? お断り以前に、信じてもらえない?
やはりこれは、竜の好きを表す鳴き声が、お肉大好きを表す鳴き声と、同じだったせいなのかしら。
「――――お肉とかと一緒だと言われるのは心外です。世界で一番好きです」
「ふっ。……俺は、情けないな。先に言わせるなんて。……俺も好きだよ、ライラ。きっと、ベリア殿から話を聞くたびに、会ってもいないライラのこと、好きになっていった。出会った瞬間から、ライラが俺の一番になった」
「私も、父から聞きたかったです。アルベルト様の話を」
「……竜騎士団に来てから、失敗ばかりで、あまり聴かせたくないな」
そう言いながらも、大切な思い出を噛み締めるみたいに、アルベルト様は微笑む。
きっと、ここに来たばかりのアルベルト様は、可愛らしかったに違いない。
そして、誰よりも努力したのだろう。
アルベルト様が、私を抱えたまま立ち上がる。
抱き上げられた肩越しに、宝石と金の装飾がなされた、黒い鞘におさまった剣が、台座に立て掛けられているのが見えた。
その剣から感じる魔力は、なぜか、懐かしい。
そこからは、懐かしい、父の気配が感じられた。
たくさんの竜人たちの魔力を吸ってきたことが、そこから、感じられる。
一番濃密なのは、アルベルト様の魔力だ。
「……行こうか。ライラ」
きっと、あの剣が、父やアルベルト様を縛る原因の一つに違いない。
今、聞いてもきっと、アルベルト様は、困ったように笑うだけで答えてはくれないだろう。それは、何故か、確定事項のような気がした。
私は、そっとアルベルト様に頬を寄せて、「……はい」と、頷いた。
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