盲信
宜しくお願いします。
私は、アパートでひとり暮らしをしている。
『天気です
今日の天気は曇りのち雨、降水確率は80%でしょう』
何が80%だ。
私は傘を持って出掛けなかった。
雨は、降らなかった。
『こちらのマッサージ器、今までの商品とは違い学習機能を搭載し個人個人のコリに合ったマッサージをしてくれます!お買い求めは今すぐ!』
何が学習機能だ。
テキトーな嘘ではない良さそうな事を並べて、購買意欲をそそっているだけだろ。
ネットでは不評の嵐だった。
『確かに私は不倫をしました
しかし、妻のことを愛していなかった訳ではないんです
別の人も好きになってしまった
それだけなんです
これからは心を正し妻1人を愛し抜くと誓います』
何がこれからは愛し抜くだ。
どうせまた不倫して同じことを言うんだろ。
また、不倫会見が行われた。
「もしもし、母さん
俺だよ俺
実はさ、脳みそに腫瘍が出来ちゃったみたいで……癌、みたいなんだよね
治療しようにも取り除きにくい位置にあって、脳を傷つけるかもしれないんだ
こんなお別れになっちゃって、ごめん」
何が癌だ。
そうやって心の隙を作って金を騙し取る、新しい詐欺だろ。
私は絶対に信じない。
私の息子は、死んだ。
今になって思えば、何をそんな意固地になって全てを信じてこなかったのか。
……いや、私は自分を信じすぎていたのかもしれない。
私は馬鹿だ。
もっと他を信じられれば、せめて息子の最期を看取ることが出来たかもしれないのに。
『天気です
今日の天気は曇りのち雨、降水確率は30%でしょう』
30%か。
少しでも雨が降るなら傘を持っていかないと。
雨は、忽然と降った。
『こちらのマッサージチェアー、今までの商品とは違い肩の部分からお湯が出る仕組みを追加し、肩湯が出来る様になりました!
お買い求めは今すぐ!』
マッサージチェアーに肩湯機能、何て斬新なんだろう。
これは絶対に買うべきだ。
ネットではそこそこに好評だった。
『この度は不倫をしてしまい、申し訳ございませんでした
色々な人に見られ模範となるべき人間がこの様な事をしてしまったのは恥だと思っております
これからは心を入れ替え、1人の女性を愛し抜くと誓います』
これだけ反省しているのなら許されるべきだ。
きっと変わってくれるに違いない。
それから暫くして人気に火が付き、時の人となった。
「こちらのお水なんですがね?
これを飲み続けるだけでもっちもちのすべすべ肌、病気も怪我も治る優れものなんですよ
しかもこれを飲み続けてお金持ちになった人や仕事や勉強でかなりの成果を出した人も居るんです
どうです?
買いませんか?
纏めて買われますと、多少の値引きが効きますが……」
私は即座に買った。
これで些細な怪我も無く、息子のような病に侵されることもないと信じてやまなかった。
その後
私はこの水を販売する側になったが、殆ど売れず大量の在庫と借金が残った。
私は何がいけなかったのだろうか?
あの頃のように自分を信じるのはやめた。
それなのにどうしてこんなにも上手くいかないのだろう。
私は信じる事も信じない事も出来ずに
アパートのベランダから飛び降りた。
ありがとうございました。