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俺様魔王は魔獣育てに忙しい5

 

 ラウルの後に続き城内を抜けると、広い庭園に辿り着いた。


「天気も良いし、今日はここで遊ぶとしよう」

  

 ラウルは木陰まで行きごそごそと何かを探すと、大量の何かを抱えてこちらに戻ってきた。

 両手いっぱいに抱えていたのは、大量の枝だ。


「ポチ、今日はこれで遊ぶか」

 

 ポチは嬉しそうにウォン!と吠えると、ラウルの周りをクルクルと回った。

 そしてラウルは大量の枝の中から一つの枝をブンッと放り投げると、ポチは嬉しそうに枝を追いかけて走り出した。

 ポチが枝を取ってきている間に、ラウルは一旦枝を地面に置くと、別の枝に魔法をかけた。

 枝は黒い光を放ちながらグネグネと形を変え、丸い球体へと物質変化を起こした。


(こ、これは物質変化の魔法!?)


 初めて見る物質変化の魔法に、私はあっけに取られていると、ラウルはその球体をズイと差し出してきた。


「お前は、このボールでポチと遊んでやれ」


(これは……投げればいいのかしら? それにしても、魔法って凄いわね。枝からボールが出来るなんて)

 

 私は手にしたボールをしげしげと眺めていると、ラウルははぁとため息を吐いた。


「お前、さっきの我の行動を見ていただろう。それを投げてやればいいだけだ。ポチの体力は無尽蔵だから、長時間付き合うと我の肩が痛むのだ。だから、お前も付き合え」


(ため息吐かなくてもいいじゃない、感じ悪っ!)


 私が心の中でラウルに悪態を吐いているうちに、ポチは枝咥えてあっという間に戻ってきて「まだ? まだ?」と目を輝かせながら今度は私の周りをクルクル回り始めた。


「あ、ポチ、ごめんね! じゃあ私とも遊びましょう。行くわよ、そーれっ!」


 ボールは綺麗な弧を描き、遠くの木まで飛んで行った。

 それを見ていたラウルは「おお!」と感心したような声を上げると嬉々とした表情で私に話しかけた。


「イザベルは公爵令嬢の割にはボール投げが上手いな! よし、たくさんボールを作ってやるから遺憾なくその力を発揮せよ」


 ラウルは私の頭をヨシヨシと撫でながら側に落ちていた枝に次々と物質変化の魔法をかけ始めた。


(ちょっ! 私は子どもじゃない!! それにそんなにボール作られても困るってば!!)


「ラウルっ! 先程も私の頭を撫でていましたが、私は幼児ではありません! それにポチ一人に対してそんなに大量にボールを作られても困りますわ」

「ポチはああ見えて力のある奴だから、すぐに壊れるゆえに沢山作らねばならんのだ。何、お前は頭を撫でられるのは好みではないのか。なら、こちらの方が好みか?」

 

 ラウルはニヤッと意地の悪い笑みを浮かべると、グイッと私の腕を強く引いた。


「きゃっ」

 

 うわわ、倒れる!! と、慌てて手を付こうとしたが、ラウルの堅い胸へすっぽりと抱き止められた。

 そして、そのままラウルにぎゅうと抱き締められてしまった。


(ギャーー!! 何、何!?)


「ちょ、ラウル!?」

「そうか、お前は濃厚な接触の方が好みのようだな」

「ち、ちがっ!」

「そうか? 顔が赤くなっているぞ」


 ラウルは片手で私の顎をぐいっと持ち上げると、妖艶な光を宿した赤い双眼で私を見つめる。

 そして、ペロリと舌なめずりをすると、ぐぐっと顔を近付けて来た。


(え!? ちょっと待ったーー!!) 


 キスされると思った私は、咄嗟に手を体の間に入れて距離を取ろうとするも、顎を掴まれているので身動きが取れない。

 

(へ、ヘンリー殿下……!!)


 思わずぎゅっと目を瞑ると、ラウルの息がふっと耳に掛かる。


「抵抗されると逆に唆られるな。……それとも、それがお前の誘いの手口か? イザベル」

「なっ! ち、違います!!」

 

 ラウルはふっと鼻で笑うと、私を拘束していた手を離した。


「そんな顔をしながらでは、説得力に欠けるがな。……ま、機会はいくらでもあるし、じっくりお前を攻略することにしよう」

 

(こ、この俺様魔王め……!!) 


 思わず拳に力が籠る私の足元で、はっはっはっという息遣いと、きゅうんという鳴き声がした。


「パパ、イザベル、何してるの?」


(うわーーっ!! ポチに見られていた!?)


「ポチっ!? な、何でもないわ! さ、遊びの続きをいたしましょう!?」

 

 ポチを誤魔化すために、私は慌てて側にあったボールを手にすると、それをポーンと遠くに投げた。


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