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魔王は俺様キャラ?


(魔力……!? そう言えば、以前、リュカ先生が魔王に動きがあると話していたけど、その狙いは私だったってこと!?)


「わ、私の魔力は弱いもので、魔王である貴方の力になれるとは到底思えません。ですから、私を早く元居た場所へ帰して下さい!」

「悪いがそれは出来ぬ。力の強弱ではなく、お前の持つ魔力自体が必要なのだ」

「帰せないって……そんなっ! じゃあ、どうしたら帰してくれるのですか!?」


(元居た場所に帰れないなんて困る! 一刻も早くここから出して!!)


「当分、お前を帰すつもりはない。あの巫女が力を発揮出来れば別だが、あの様子ではたとえ力を取り戻したとしても、まだその力を十分に使いこなせまい。それでは困るのだ」

「では、私はどうしたら……」

「お前は、我が魔法を使う際に闇の魔力を発動するだけで良い。お前の魔力と波長を合わせることで、我の魔力は増大するからな」


(魔力が増大? そんな話聞いたことがないわ)


「なんだ? お前は闇の魔力について何も知らないのか?」

「え?」

 

 魔王は顎に手を当ててしばらく考え込むと、すっと顔を上げて私に話しかけた。


「面倒だがお前には少々説明が必要なようだな。……話が長くなるから茶の用意をさせよう。それにお前の着替えも侍女に持ってこさせよう」


 魔王は近くにあったベルを鳴らすとコンコンッと扉を叩く音がした。

 魔王が返事をすると給仕服を着た女が入室してきた。

 しかし、服からチラリと覗く下半身は人間のものとは違い、獣の足のようなものが見える。

 それに、よく顔を見ると、動物のような耳も生えている。


(給仕服を着ているから一見女性に見えるけど、これって魔獣……だよね?)


「そうだ、ここにいる全ての者達は魔獣だ。ただし、危害を加えるような真似はしないから安心しろ」


(んなっ!? 思考を読まれている!?)


「好きで読んでる訳ではないが、お前と我の魔力は同調するゆえ、意識しなくても勝手に流れ込んでくるのだ。お前も思考を読まれたくなければ、我のように思考遮断の魔術を使えば良かろう」


(思考遮断!? そんな魔術なんて知らないよ! それに、魔王のように簡単に魔術を使えるわけがないでしょ!)


「そんなことも出来ないのか……はぁ、先が思いやられる。それに、我の名は魔王ではない。ラウルだ」

「お、お言葉ですが、私は魔力も少ないですし、まお……ラウル様のように、簡単に特殊魔法なんて使えませんわ」

「様は要らぬ。ラウルと呼べ」

「ですが」


 前世の私ならいいが、イザベルは公爵令嬢だ。

 親しい間柄でも様付けが基本のため、呼び捨てには抵抗がある。


「我の言葉には従ってもらう。分かったな」

「は、はぁ……」


(さっきから随分と強引だなぁ。魔王は俺様キャラなのか?)


「おれさまきゃら、とは何だ?」


(ギャーッ! また読まれてる!!)


「な、何でもありませんわ。それより、せっかく着替えを持ってきていただけるのですから、身支度を整えてもよろしいでしょうか?」


(ラウル様さえいなければ……もしかしたら、逃げ道があるかも知れない)


「ああ……分かった。では我は別室で待機することにしよう。ちなみに、逃げる、などと馬鹿な考えをするのはよせ。どう足掻いても、お前は我からは逃げられない」


 魔王、いや、ラウル様はすっと私の頭に手を翳すと、途端に体が軽くなった。


(あ、身体が動く。魔法が解除されたんだわ)


 ラウル様は、すくっとその場に立ち上がると、こちらを振り向くことなく扉から出て行った。


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