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新青天の霹靂  作者: まめ
第一章 はじまり
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青天の霹靂7(豪造の思わぬ怪我)足す

後日、薬のビンに毒を混ぜた犯人は捕まった。何でも、結婚翌日に奥さんが飲酒運転の車に跳ねられ亡くなったらしい。

同情はするが、だからといって共感はしない。

でも、その男の言葉には頷くものがあった。

その男がいつか復讐したいと思っても、犯人はもうオリの中のため、手が出せない。

何でこの国は犯人の人権は言うのに、被害者の人権は言われないんだと言ったと言う。

何故、被害者は守られず、犯人は守られているんだ。

と、男は嗚咽した。

確かになと、廉夏も思った。

何でこの国は被害者に優しくなく、加害者を守ろうとするのか? 

それがずっと不思議だった。

何でだろう? 

一番に考えるべきは、被害者じゃないのか? 何故、この国は被害者を守るのか。加害者が可哀想過ぎる。

それを廉に言ったら、たぶん戦争に負けたことで負け根性が叩き込まれているのだろうと、言った。

それが、何でと廉夏は聞く。

戦争では、国のために闘ったのに、罰せられ、正義とは何なのかを考えさせられる。

国のために、闘い負けたら、守ってももらえず、人権何かまるでない。

しかも、彼らは戦罪だ。

何故?

可笑しくないかと、廉に言ったら、それが負けた側の人間、何だと返ってきた。

だからといって、これから幸せになろうとする人が妬ましかったと、出入り業者の男が言ってたそうだ。

なんて、自分勝手な奴だ。

さらに、豪造が、注意をしていた犯人は、なんと他の式場で捕まったらしい。

どうやら、式場を間違えたらしく、他の人の式場に潜り込んだらしい。

その人に詫びに行けば、式場のサプライズだと思ったらしく、笑っていた。何て、お粗末な結果だ。

廉夏は腹を抱えて、笑った。廉はそれを聞いて呆れていた。

もっと、きちんと下調べをしろよ、式場を間違えるなんて、ナンセンスだ。

きちんと下調べぐらいしとけよなと、廉夏も、思わずにいられなかった。

だから、あの女性の事ではなかったらしい。

これには、廉も頭を抱えた。

犯人がきちんとしてくれないと、意味がないと。

「キョェ~」

結婚式から、1週間後。

庭から何とも、変な雄叫(オタケ)びと、いうか悲鳴がした。

廉夏と冬眞は何事かと駆けつけると、そこにはひっくり返った豪造がいた。

頭には何か、打ち付けたと思われる傷が有り、他にも足には擦過傷があった。

『いったい何が?』

近くには、下駄が落ちている。

「やっぱり、事故とかかな?」

運悪く飛ばした下駄が頭に当たったに違いないと推理を廉夏が披露すれば、冬眞は笑いながら否定する。

「それこそ考えられないでしょう。あの悪運の強さには、僕でも惚れ惚れしますから。たまたま通りかかった人の頭の上に落とすことはあっても、自分の上になんて、万に一つもありませんよ。それよりは、豪造さんももうお年。もう、何時お迎えがきてもおかしくはありません」

「えー、それこそ考えられないよ。おじいさまを迎えにこれるような剛胆で気概がある死神がいるとは、到底思えないわ」

いるなら会わせて見ろと言うように、胸を張って言えば。

こちらは、淡々と冬眞がの案を否定する。

「それを言うなら、事故の可能性も低いのじゃあありませんか?」

「どうしてよ?」

冬眞は褒め言葉のつもりで言う。

ただし、聞いている者にとってはそう感じないものだったが。

「あの豪造さんですよ。廉夏ちゃんがおっしゃったように、死に神も裸足で逃げていくでしょう。だから、事故なんてことは万に一つもありえません」

「じゃあ、何?」

考え込む廉夏。

そこに優雅な足取りでやってきたのは廉だった。

廉は出勤前であるため、その準備をしていた。

その中聞こえてきた叫びに、廉はとうとうやったかと思った程度だった。

廉にしてみれば起こるべくして起こった事象にすぎない。

だから、駆けつけなかった。

「答えは、まだ出ないかい?」

出社準備が一通り終わってからゆっくりと来る廉。

一部の隙もなく、スーツと眼鏡でビシリと決めている。

「廉兄はわかるの?」

廉夏が聞く。

それに対して、廉はにこやかに微笑むと、

「たぶんね。冬眞も降参かい?」

冬眞はそれに、苦笑いする。そして、首をゆっくり振る。

「さすがだね」

「じゃあ、こうなったのは、つまり必然ってこと?」

「そうだね、冬眞。その分だと、理由もわかっているんだろ?」

「ええ、おおよそはですが、でも、ここは廉さんの見せ場。僕ごときが邪魔をするのは無粋と言うもの」

「君らしいね」

そう言われ、廉は笑う。

「流石だよ。冬眞の頭の働きには目を見張るものがある」

そう誉められ冬眞は照れる。

「お褒めに預かり光栄ですよ」

「で、何?」

一人蚊帳の外におかれた廉夏がブスクレながら言う。

「廉夏はこう言うとき、その事象より先に答えを求める傾向があるね、昔から。もう少し自分で考えるようにしなさい。いつも答えを教えてくれる人がいるとは、限らないのだからね」

廉が言えば、ますますブスクレる廉夏。

「どうせ数学やれば答案用紙に、ほとんど途中式書きませんよ。でも、答えがでていればいいのよ。だって、みんな分かるでしょ?」

「問題を見れば分かるというのは、たぶん廉夏だけだと思うよ」

「そうなんだよね。問題読めば分かるから逆に教えてと言われても、何が分からないのかが分からないから、教えてあげられない。どうしてそんなこと聞くのって思っちゃうから」

廉夏がそう言えば、廉は目を細めて言う。

「それが、廉夏の欠点だね。お前はすぐ答えを求める」

「どうせミステリー読み始めたら、すぐ犯人が分かる後ろにいっちゃうさ」

そう言って、廉夏はシュンとしたように項垂れる。

「ま、そこが廉夏らしいと言えばらしいがな。答えも間違ってないし」

「でしょう」

すぐ復活する廉夏に廉は苦笑いを禁じ得ない。

「それが誰にでも分かるように、書ければ言うことないね」

鋭利(エイリ)、努力します」

「そうして下さい」

話が脱線しまくりなのに気づいた、廉は話を元に戻す。

「廉夏は全くあり得ないと思っているようだけど、私はこれが可能性としては、一番高いと思っているよ」

「それじゃあ、何、このおじい様が、何かに悩み苦しんでいるとか。それこそ考えられないわ」

「まず言っておく。廉夏が言ったことは、必ずしも正しいとは言えないよ」

やさぐれまくっている廉夏の頭を、宥めるようにポンポンと廉は軽く叩く。

「さっき廉夏と冬眞が言ってたように、悪運の強さと死神も逃げ出してしまうようなお爺様だ。ここまではいいね?」

廉夏に確認を取りながら、廉は話を進めていく。

「かといって、これを殺したいと思っている奴は、多いが実際殺しにこれる、勇気のある奴もいない。ここまでもいいかい?」

とうとう、これ扱いされる豪造。だんだんと扱いが雑になっていくのは、たぶん気のせいじゃないだろう。

「うん」

コクリと廉夏は肯く。

「つまり、事件性も皆無と考えて良い」

「そうやって、可能性を潰していくと起こるべくして、起こった事象しか残らないってことね」

「ご名答」

大袈裟に廉は拍手をする。

それに、廉夏は不満げな顔をする。

「でも、それならお爺様はなぜそんな起こるべくして起こった事象なら、なにをそんなにやっていたの?」

クスリと廉は笑う。

「だからこそだよ」

「えっ、どういうこと?」

「早い話が、 そんなには人は強くあることはできないてことだよ」

「それって、どういうこと?」

廉は、身も蓋もないことを言う。

「ありえなさそうな人間の方が、以外と芯が脆かったりする。だから、突然衝動的かつ短絡的行動に走ってしまうものだよ」

「それって、つまり打たれ弱いってこと?」

廉夏も身も蓋もない聞き方をする。

「早い話がそうだね。例えば、孫の奇行とかね」

廉夏は、そう言われビクリとする。

「おや? 廉夏さん何か心当たりでも?」

廉は笑いながら言う。

「ベ、別にあれは、そんなんじゃなくって」

ゴニョゴニョ言い訳をする廉夏。

「心当たりがないのなら、別によろしんじゃないですか?」

廉は薄ら寒い笑みを浮かべながら、到底慰めとはとれない言葉を口にする。

「まぁ、会長のする突拍子のない行動に比べれば。廉夏の行動なんて可愛いものだろう。今回の件は、良いクスリになっただろうし」

それを受けて冬馬が言う。

「強すぎるクスリは、逆に毒にもなると言いますがね」

それに対して、

「毒ぐらいで、この人の場合はちょうど良いと思いますよ」

サラリと飛んでもないことを言う廉。3人で勝手なことを言ってると、低いうめき声が聞こえてきた。どうやら、豪造が目覚めたらしい。

「何だ、死んでなかったのか? つまらん」

廉夏が言うと、豪造は泣き真似をしながら、

「しどい、なんて冷たい孫なんじゃ。お前たちの中に、儂のことを心配するものは、誰一人としていないのか? よ~く、分かった」

その言葉を受けて廉が言う。

「大丈夫ですか?」

「何が『大丈夫ですか?』じゃ? そんなこと思ってもいない癖に」

ケッケッケーと豪造は言う。どうやら、ここにも機嫌を損ねた人がいるようだ。

「それこそ、心外です。私は心から心配してますよ」

「廉~」

感動したように言う、豪造。だが、続く廉の言葉に豪造の怒りは再熱する。と言うのも、こう言ったからだ。

「もう良いお年、自分の年を考えてやって下さい」

「そう言えばお爺様、いったい何を占っていたの?」

まさか廉夏に、あれを辞めさせるには、どうしたらよいかを占っていたとは言えない。

「さぁ、起きて下さい」

廉が言うと、その場でジタバタする豪造。どうやら立てないようだ。

「ほら、ご自分の年齢を考えたくなったでしょう?」

廉が、そう言うと豪造が怒ったように言う。

「弁護士の小早川を呼べ、すぐに、遺言状の書き直しだ」

小早川とは、神崎の財産管理を一手に引き受けている弁護士だ。もう、60を越えるがまだ現役バリバリの悪徳、いえいえ優秀な弁護士様である。30年前から豪造と意気投合し、顧問弁護士をやってもらっている。額に脂汗を浮かべながら、小早川、小早川という。

「それだけ、口が回れば大丈夫ですね。とはいえ、先生は先生でもまず医師に見せるのが、先です。ですから、東雲(シノノメ)先生にいらしていただきましょう。その後で、小早川先生に連絡するなら、して下さい」

廉は豪造の言葉に取り合わない。廉は豪造を、運び医師を手配する。

「じゃあ、私はもう行くので、お大事に」

時計に目をやり言う。それが、合図であるかのように廉夏たちも引く。部屋から出た瞬間、廉は声をかける。

「廉夏」

「分かっているわ、今週中には……」

廉夏は、ビックとし、恐々言うと、廉が冷たい眼差しを向ける。

「今週中?」

廉がジロリと睨めば、廉夏はすぐ否定する。廉夏はこの時、完敗した(笑)

「今日中に片付けます、はい」

「なんか強制したみたいで悪いな」

シレッという廉に、廉夏は引き吊ったように笑う。

強制したじゃないかと思いながら、廉夏は笑って言う。

「いえ、全然」

と、廉夏は否定する。

「じゃあ、綺麗にしとけよ」

「はい」

スゴスゴと廉夏はリビングへ向かっていく。その後ろ姿を見て冬馬はちょっとかわいそうになる。

「廉さんはあれ、片づくと?」

冬眞が聞く。

「廉夏が気に入るのは、2個だけだ。後はゴミ行きだろう?」

「流石ですね。僕も同じです」

「さっさと廉夏には片付けてもらうか。正直、俺も藁人形には、もう見飽きた」

「ですね。でも、廉夏さんの操縦廉さん上手いですね」

「あいつは俺が育てたようなものだからな。あいつの親と言うか、俺達の親は仕事で忙しくて、あいつを見られなかった。だから、亡くなったときもあいつにはテレビで見る人が亡くなったぐらいにしか、思わなかったと思うぞ。それが、京極で生を受けた者の宿命かもな」

遠くを見つめるように廉は言う。

「でも、そんなの悲しいですよ」

「それが、人より恵まれている者の定めだ」

廉はあっけらかんと言う。

「なんか恵まれすぎているのも、考え物ですね」

「そうだな」

廉は、再度時計を見る。

「まだ、休暇取っているんだろう。それなら、お前も廉夏を手伝ってやれ。元々お前のファンからなんだからな。お前にも責任がある」

「あっ、責任転嫁しましたね」

「どう思おうと、お前の自由だ。でも、お前のやることは変わらない」

それを聞いて、深々とため息を付くと、冬眞は廉を笑って送り出す。

「分かりましたよ。行ってらしゃいませ」

簾は、車のキーを指で回しながら言う。

「見物だね。お前らが奮闘する姿が目に浮かぶよ」

「ご期待に添えるように頑張りますよ」

「そうしてくれ。じゃあな」

廉は運転手は付けない。大手の社長なのに、可笑しいなと思い聞いたら、『車の中ぐらい息を付きたい』と返ってきた。つまりは、己以外信用を置けないと言うことか。

送り出したら、さっそく冬眞はリビングへと行く。

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