罠
タイトルが定まってないのでまだへんこうあるかもです
始まりの広場前まで戻ってくると、ちょうど中央あたりに30名ほどの集団が見えたので慌てて駆け寄る
いや、30名ほどではない。そこには集合時間5分前だと言うのに既にクラスメイトは全員揃っていた
……まじかよ、早すぎだろ…
こういう時自分が遅刻していなくてもすごい罪悪感に襲われるためいい気はしない
ましてや嫌われ者である俺が人を待たせたりしたらなんて言われるか
恐る恐る誰かが文句を言ってくるのを待っていると、日賀が喋り出す
「みんな揃ったか?じゃあ草原へ出発するぞ。みんな着いて来てくれ」
そう言うと、日賀は武器屋で揃えてきたのであろう赤い鎧を輝かせながら王都の外へ向かって歩き出していく
あれ、なんも言われないの?
助かった……心底そう思いながら集団の最後尾をついて歩く
「ここっぽいな」
嘔吐の外に出ると、そこは辺り一面草のおいしげる広大な草原だった
「綺麗……」
女子のひとりがそう言う
確かにそうだ、まず現実世界にいたままじゃ拝めることは出来なかっただろう自然が眼前に広がっており、とても感動する。
モンスターなんか居ないんじゃないのかと思わされるくらいだ
「おい!なんかいるぞ!」
集団の1番端にいた木村が叫ぶ
声のした方を見ると、そこにはイノシシのような形をしたモンスターの群れがものすごい勢いでこちらに迫ってきていた
ざっと40はいるだろうか
「え、これ、やばくね?」
「いやいやいや、ちょっと数多くない?」
クラス全員に緊張が走る
「みんな!落ち着け!数が多くても敵のレベルは低いはずだ!群れをバラバラにして1対1に持ち込めば勝てる!」
動揺していたクラスを日賀が引き締めあげる
「全員ギリギリまで群れを引き付けて俺が指示を出したら散らばれ!」
ドドドドドドドド……
「まだだ……まだ……」
そしてイノシシ型モンスターの群れが10メートル前まで来た時、
「散らばれ!!!」
日賀が声を張り上げると同時に、35名がいっせいにバラバラになる
するとイノシシ型モンスターもそれぞれ狙う獲物を決めていたのだろうか、見事に群れがバラバラになり、俺にも2頭ついてくる
「まじかよ!なんで俺だけ2頭も…!」
後ろを振り返りながら己の運のなさを嘆く
必死に走り、ある程度周りと離れたところで
振り返り太刀を抜刀する
イノシシ達が間合いに入ってきたところで
「はあっ!」
思い切り剣を振り、2頭のイノシシの腹に傷をいれる
「ちっ…浅いか…!」
そう思い再び剣を振るおうとするとその光景に驚愕した
「ギヤァァァァア!!」
イノシシたちの傷口から炎が噴出し、パァァァンと音を立てながら消えていったのだ
「え、まさか……」
驚いた顔で刀を見つめる
いや…強すぎだろ
他の奴ら見てみろよ。普通に一体に苦戦してるし多分あれが普通だよな
これさえあれば大抵のモンスターは倒すことが出来し
これは鍛治職人が作ったのでこのワールドに1本しかない超激レア剣である
これほんとに貰ってよかったのかなと思いながら微妙な顔で周りを見渡していると
「た、助けてくれ!」
木村が悲鳴をあげながらこちらに向かって助けを叫んでいる
だがあのイノシシの姿はどこにも見当たらない
(…何に脅えてるんだ?)
少し考えていると、再び木村が叫んだ
「姿を消すモンスターに襲われてるんだ!」
「なっ!姿を消す?」
そんな強い性能を持ったモンスターがこの近辺に生息するのだろうか……なにか違和感を感じる…
そう不安に思いながらも、見捨てるわけには行かず助けに行こうとして踏みとどまる
そう言えばこいつも俺を苛めているひとりだよな
……助ける価値があるのか?これは所詮ゲーム、死んだって生身の人間に戻るだけだしここで別に俺が助けに行かなくたって何も問題はない
でも…
「今行く絡まってろ!」
そう叫び刀を再び鞘から抜き駆け寄る
すると突然
ビリビリビリッッ
木村の目の前まで走ってきたところで地面の下からトラップのようなものが出てきて全身に電流が走ったような感覚になり動けなくなる
「うわっ!」
体がしびれに耐えきれず、地面に膝をつく
(う、動けない…)
しばらく何が起こったかわからず、唯一動く目を動かし周りを見ていると、何故か先程までイノシシ型モンスターと戦っていたクラスメイトが俺を囲んで円になっている
「お、おい!木村!どういう事だ!」
必死に叫ぶと日賀がゆっくりと近づいて目の前まで来ると膝を織り同じ目線になる
ドスッ
「ガハッ!」
途端、日賀の拳が溝内に刺さる
なぜ自分が今罠にかけられているのか、なぜ殴られたのかが未だにわからずただ唖然としていると日賀が口を開く
「そんな顔すんなって。今から教えてやっから」
ニヤニヤしながらそう言うと、立ち上がる
「よっと。じゃあまずなんで同じギルドなのに攻撃や罠が通るのかってとこからだな。お前もよく思い出してみろよ、いつお前が俺達2ーAのギルドにはいった?」
そこではっとする
確かにギルドに加入するような申請や登録はしていない。ただその時は向こうで勝手に入れてくれている、そう思っていた。
待てよ…?じゃあ…
「いつ他の奴らがギルドに入ったかって?簡単だよ。お前が広場へ来る5分前にメッセを送ってみんなを集めてギルドを結成した。それだけ」
あのときか!
だから俺以外の全員が集合していたのか
ここでさっき感じていた違和感に合点が行く
「だからって…どうして…」
痺れで思うように動かない唇をやっとの思いで動かし真相を聞く
「どうしてだって?みんなお前が嫌いだからだよ。嫌われ者のお前が俺たちに近づかないようにここで1回痛めつけとこうと思って木村に陽動を頼んだんだよ。だからもちろん姿が見えない敵なんていない」
言い終わるとハハッと笑う
「お前があの時あんなことしなかったらみんなから虐められることは無かったのにな」
「ち……が…」
まずい、本格的に唇が動かなくなってきた
「みんな今のみたか!?こいつ否定しなかったぞ!
だからお前は1度ここで罰を受けとかないといけないんだよ。他のみんなもそう思うだろ?」
思惑通り、そんな顔で日賀は膝まづいた俺を見た後周りにいるクラスメイトたちに視線を向ける
「しーね。しーね」
クラスのひとりがそう言うと他のみんなもそれに続くように罵倒してくる
「しーね。しーね」
鳴り止まない不穏なコールがエリアに響き渡る
「優しい優しい俺がわざわざ罪人のお前に罰を与えてやるんだから感謝するんだな」
そう言うと、笑いながら剣を抜きはじめる
そして次の瞬間、背中に激痛が走り動けないからだを必死に動かそうと悶える
「…ッッ!!!」
「ハハハハハハハハハハ!!」
グサッグサッと何回も剣を抜いては刺され、激痛が走り、意識が遠のいてゆく
薄れゆく意識の中、日賀が耳元で囁く
「いやぁあの時はありがとなぁ、罪被ってくれて。助かったよぉ。お前があの場にいなかったら俺らが捕まってたわぁ。だから感謝の印にそのレア武器。死んだらもう一度手にするまで所有権なくなるらしいからこれは俺が預かっておいてやるよ」
そう言うと、笑いながらもう一度剣を抜き背中に突き立てる
「バイバイ、強姦魔の三月くん」
ドスッ
ーそして俺の意識は暗転したー