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第12話 病院

 予約とは違う日時になってしまったものだから、午後の診察が開始してすぐ受付に並んだのに十五時を過ぎても名前が呼ばれない。

 待合室の簡易な椅子に座り続け、隣にはソフィの姿。

 眼鏡をかけて黙って本を読む姿からは、活発で物怖じしない普段の様子と違って淑やかな色気のようなものを感じた。本当に、黙っていたら年上にしか見えない。


「…………なに?」


 視線を察知されたのか、ブロンドの前髪を軽くかき上げながら問われる。率直に言ってセクシーだ。深い青の瞳に吸い込まれてしまいそうで怖い。俺なんかが隣に座っていて良いのだろうか、なんてことすら思う。


「いや、ソフィって黙ってりゃ年上に見えるよなーって」

「一応、四月生まれだからもう十六歳だけど……。それ、褒めてるの?」

「そのつもり」

「……そっか」


 それだけの会話を交わして、ソフィは再び本の文字を追い始めた。一瞬、透明なメガネに英文が反射して映る。

 病院に付き合ってもらったはいいけれど、こうも待たされるとどうしても気まずい空気になる。時々『なんで金髪美女とどこにでもいるような少年が一緒に……?』と言いたげな痛い視線を浴びせられてもいるし。

 何より、自分の無茶が発端で付き合わせておいて何時間も待たせるというのは、申し訳なくて胃がキリキリしてくる。早く順番、回って来ないかな。


「四十四番のかたーっ」


 診察室の手前で女性の看護師が呼ぶ。番号で呼ぶのは個人情報やプライバシーの問題からだろう。なにせこの病院には、俺なんか比べものにならないぐらい遙かに名の知れたアスリートも通うことがあるそうだ。

 ひょっとすると、ここがなけりゃ日本に帰国という話は無かったかもしれない。良い医者がいるというのは安心材料になるだろう。


「おっ、ようやく」

「四十四番……」

「どうした?」

「日本の病院では四を避けるって聞いたよ。シって読めるから。番号にまで気を(つか)うなんて凄く日本らしいと思ったんだけど」


 まあ確かに。一階二階三階五階、と四階が存在しない病院もある。


「…………多分、スポーツ特化型の整形外科で死ぬ人は少ないだろうからな。病院側も、そこはあんまり気を遣ってないんじゃないか」

「実際に体験しないとわからないことって、沢山あるね」


 言いながら、パタンと本を閉じた。

 どんな本を読んでいたのか気になってチラリとタイトルに目をやると、おどろおどろしい血のような文字で『Death(死の) hospital(病院)』と書いてある。

 ………………痛い視線の何割かは、そのタイトルに向けられていたんじゃなかろうか。


「おい、その本……」

「ん、これ? 病院で読む病院の話はひと味違うよ! ホラーがもっとホラーになるね!」


 悪気はないようだけど、もう少し気を遣うことを覚えたほうがいいぞ!

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