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ハードモードに疲れた天才落第生、のんびりコーチで成り上がる。【連載版】U15ガールズ!  作者: 本山葵
立ち上げ編2 『家に帰ると、妹とJCがいる』
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第9話 フットプロム!

「フットプロム……?」


 チサはフットプロムという言葉が聞き慣れないらしい。


「サッカーのミニゲームだよ。お互いの陣地に三角コーンを三つずつ置いて、相手のどれかに当てたら一点」


 フットプロムは一対一や二対二で行う日本発祥のミニゲームだ。

 留学先で広めると面白がられて、練習メニューに加えられたりもした。

 オランダ人選手が『パナノックアウト』というミニゲームに似ていると言っていて、聞くと共通する点も多い。小さなコートを使い技術と俊敏性、攻守の切り替えの速さが要求されるという点は同じだ。


「俺がやるのか?」

「当たり前でしょ。お兄ちゃんが見たいってお願いしてるのに、他に誰がやるの」

「まあ、そりゃそうだが…………。でも相手は、子供だぞ」


 そう口にした瞬間、ちょっと低いところでピシッ――と空気が凍り付いたような気がした。


「こ……子供じゃないです!」


 おや? 何故かムキになっていらっしゃる。


「チサちゃん、まだ小学生みたいだもんね。相手にならないよねえ」

「私はもう中学生です! 心乃美先輩と同じなんですよ!」

「えー。中一なんてまだガキじゃん」


 中二もガキだけどな。


「ガキじゃありません!」

「高校生相手に勝てるんなら、ちょっとは見直してやらなくもないけれどぉ」

「やります! 勝ちます! 私がもう子供じゃないって、証明して見せます!」


 俺は流れに付いていけず、心乃美の傍に寄り声のボリュームを絞って事情を訊いた。


「なんでチサ、あんなにムキになってるんだ?」

「ここ何年か、結衣が子供扱いして突き放してきたから、だろうねえ」

「ああ、なるほど……」


 瀬崎結衣とチサの関係性を見ていると、納得出来る気がする。練習初日には『年上にビビって中学の練習に混ざらなかったのはガッカリした』とか。俺の前でも結構言われてたしなぁ。

 というか想いが一方通行すぎて、チサが少し不憫だ。


「じゃ、ルールを説明するよ」


 しかしまあ、俺にも意地ってもんがある。

 医者からは『まだ全力では走るなよ』と言われているけれど、コートは小さいし、本気で走るほど頑張らなくてもいいだろう。


「単純にやろうぜ。スタートは毎回チサのボールから。んで、俺の後ろにある三つの三角コーンのうちどれか一つでも一回倒せば、チサの勝ち。そうだな…………俺はチサのコーンを十回倒したら勝ちでいいや」

「け――啓太けいたさんまで……っ。…………そうですか。私は、そんなに取るに足らない相手ですか。子供、ですか……」


 んー、ネガティブっぽい言葉の裏で、火山が噴火しそうな熱量を感じるよ?

 さっきは空気が凍っていたし、ちょっと怖いかも。できるだけ怒らせないようにしよう。


「チサちゃん、お兄ちゃんはこんなんでも留学までする人だから……」


 こんなんでも、ってなんだよ。


「そういうのは関係ないです! ……じゃあ、私が勝っても勝負は十回繰り返しましょう。十回全部勝てば、もう子供扱いしないでくださいね!」


 どんだけ勝ち気だ!?

 まあでも、この調子なら年上相手に怯むとか、そういうのは全く心配なさそうだ。上級生にとっては怖い一年生だろうな。


「……ああ。いいよ、それで」


 年下に対して、努めて冷静に振舞った。

 しかし、ひょっとして瀬崎結衣よりチサのほうが負けず嫌いで…………怒らせたら、怖かったりするのだろうか。普段の表情から今のチサは想像付かない。女の子ってわからないな。サッカーのほうがずっとわかりやすい。

 だってルールなんか全部で十七条、ページ数にしてたった五十しかないペラッペラだからね? 第三条なんて『サッカーは十一人でやるもの。一人はゴールキーパー。最低八人いないと成立しない。交代人数は大会によって違う』ぐらいしか書いてない。わかりやすっ!!  サルでもわかる!!


「じゃ、始めるよー」と、心乃美が慣れた動きで三角コーンを並べていく。


 フットプロムのコートは横六メートル、縦八メートルと、そう広くない。攻撃側にとっては、この制限の中でどれだけ上手くボールを扱えるかが勝負の分かれ目だ。

 逆に防御側にとっては、三角コーンが後方の左右と中央に三つ置かれていて『攻撃側に選択肢がある状況』が問題になる。

 だからこれは、攻撃側優位のゲームだ。


 しかし防御側も、一度奪ってしまえば相手の後ろにある三つの三角コーンどれかへのコースが開きやすく、実のところ状況判断の速ささえあれば、最初にボールを持ったほうが必ず有利だと断定出来るものでもない。

 それでも俺やチサは攻撃偏重型だから、最初からボール持ったほうが有利だろう。

 ちなみにオランダのパナノックアウトはゴールが一つで選択肢のない、点が入りにくいミニゲームだった。


「パス交換からスタートだよ」


 心乃美が転がしたボールをチサが蹴り、俺がそのまま返す。

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