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第11話 ザアザア降り

 入学式の日を迎え、今日から高校生活がスタートした。

 制服のない通信制と制服がある全日制合同の入学式は少し違和感があったけれど、制服のない小学校を卒業して中学からはイギリスの同じく制服がない私立学校に通っていたから、私服でいることに違和感はなかった。

 隣にソフィがいるというのも違和感の無さに繋がったかもしれない。


 U(アンダー)15 ガールズの練習は週四回。火曜・木曜・土曜・日曜――となっている。

 イベントと試験を除けば、高校の登校日は自由選択制だ。わざわざ登校日を練習日に被らせる必要はない。練習初日が火曜、二回目の練習日に当たる今日は木曜だ。


 一方、通常のU15(男女混成)チームの練習日は、月、水、金、日。

 日曜以外の練習日は女子チームと重ならないようになっている。


 小学校低学年、高学年、そして中学生というように時間分けができれば良いのだけれど、同じ中学生の男子と女子ではそれができない。

 限られたグラウンドをしっかり使って練習するには、違う曜日のほうが良いってことだ。瀬崎せざきのように掛け持っている選手もいることだし。

 時間が経てば土日は大会や練習試合になることもあるだろうけど、少なくとも結成直後の現時点においては女子チームにそういう予定はない。

 だから現状――幸か不幸かは別として――練習日はテンポ良く消化できそうだ。


 変に練習試合ばかりが組まれて調子が狂うってのも、選手として困った経験がある。試合の相手が見つかるまでは練習のリズムを大事にしていきたい。

 しかし天候変動だけは避けようがない。

 一応、雨が降ってグラウンドが使えなくなった場合には、市営体育館を代わりに使えることになっている。

 けれど既に別の予定が市のほうで入っていれば当然、そういうわけにもいかなくなる。


「……で、いきなり雨か…………」


 予報は、曇りのち雨。降水確率五十パーセント。

 練習は小雨決行だからなんとかいけると思ったけれど、どしゃ降り。これじゃ屋外練習は無理だ。無念……。


啓太けいた、体育館使えることになったぞ!」


 がっくり肩を落としていると、親父が耳元からスマートフォンを離して大声で伝えてきた。

 電話口でやたら長く交渉していたようだったけれど、よく考えたら普段の――男女混成の――U15チームの練習日とは違う曜日に借りることになるのだから、体育館を管理する側からすれば「え、なんで今日?」という感じだったのかもしれない。

 それでも、とりあえず練習は出来るようで安心した。


「メール連絡もコーチの仕事だからな。周りと協力してやるんだぞ」


 ……まあ、そうだよな。

 うちは月賦も安いし、事務専門の従業員を雇う余裕なんてなさそうだ。

 サッカーと直接関係があるわけじゃないけれど、引き受けた以上は、こういうこともできるようになっていかなければならないのだろう。


「わかった。親父は?」

「SNSの更新だ」


 俺は、親父が監督ということもあって、選手時代、雨天時の連絡を直接親父から受けてきた。

 悪く言えば情報の発信源として利用されたのだけれど、実際には便利なことこの上ない。

 けれど、そうでない場合はメールが選手と保護者に届く。


 ただ、メールだけでは受信側がアドレスを変えてしまったり、迷惑メールに振り分けられてしまったりと、確実とは言いがたい。

 だからSNSを使って二重に連絡網を張っている。特に選手が自発的に確認したい場合には、一番確実で簡単な手段がSNSだ。


 とにかく、全ての選手と保護者に連絡を行き渡らせるためには、できる限り多くの手段を講じて伝える必要がある。

 そうでなければ雨の中、誰も居ない――全員市営体育館へ移動してしまった――グラウンドにぽつんと一人だけ選手が来てしまう可能性がある。

 それは想像するだけで切ないし申し訳が立たない事態だ。


 ザアザア降りの雨の中、俺はグラウンドに隣接するプレハブ造りの事務所へと早足で向かった。

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