~世界の理
僕は、ふわふわな毛玉のような巨大な獣のマリオネット、”くり坊“に、吞まれたように、身体を固めました。
澄んだ鳥の音色がそのまま、耳元に飛び込んできたと思うと、そのままに、耳元で、澄んだ声が響き渡りました。なんと、今の今まで、美しい鳥の声と思っていた声は、森に棲まう獣のマリオネット、くり坊の声だったのだと、僕はその時、初めて知ったのです。
僕がそう気づいた途端、くるくると、小さな風が、僕の前で起きて、僕の目の前で止まりました。巨大な獣のマリオネット、くり坊が、小さくなって、僕の前に飛び込んできたのです。
僕は、くり坊が持つという、この国の力の源の姿に驚きました。
「初めまして、こんにちは。くり坊様。僕は、王子の“クロ”と、申します。急に、不躾にお訪ねしてしまい、申し訳ありません。けれども、どうしても、“くり坊”様にお聞きしたいことがあり……、この国の力の源と言われるあなた様のお話をお聞かせ願いませんか?お願い致します」
僕が、小さくなった可愛らしい”くり坊“に、ぺこりと頭を下げると、また、耳元で澄んだ声が響き渡りました。今度は、僕にも理解出来る言語です。
「こんにちは。王子様。片腕のユノが、あなた様をこの私の前に連れてきたということは、……やっと、この人形劇のつくられた世界の“終わり”が、見えてきたということ。私は、あなた様の来訪を歓迎致します」
僕は、“くり坊”の告げる内容に、大きく目を見開きました。……まさか、僕は、思ってもみなかったのです。何千年も変わらずに続いていたこの世界に”終わり“が近づいているなんて……!僕は、勢い込んで、“くり坊”に詳しく尋ねようとします。……すると、急に、僕の周りが明るくなったかと思うと、僕以外の皆、周りが全て、真っ白く消えてしまい、僕が、真っ白な空間に閉じ込められてしまいました。
僕は、びっくりして、うろうろと落ち着きなく、周りを見渡します。
……すると、何もない、真っ白な空間に、突如、虹色のステッキが浮いたように現れ、その後、浮く、虹色の手が現れ、顔が現れ、と、部分部分が突如、周りに出現し、形づくっていきます。それらは、美しい、虹色に彩られています。
とうとう、目の前に、その完全な形が現れた時、僕はその何とも言えない色の美しさに思わず、目を奪われてしまいました。
それと同時に、どこか不思議な響きをした声が、僕の頭の中に響きました。
『我は、『マリオネットの国』に、在りながら、”創られた国である人形劇のシナリオに登場しない”【無い筈の存在】”クライデールガ^デン”。このマリオネットの国の王子よ。我をお主は、どう使う?我は、善でも悪でも無き存在。我の好きなものに従う存在。お主がつかうべき主か、見極めさせて、貰うぞ』
そう言い放つと、ニッと、その虹色のマリオネットである彼は、笑みをこぼしたのです。