~人形劇が作られたわけ(2)
「……この人形劇を作ったのは、……私の製造者率いる、人間の者たち、国の圧政に苦しみ、押し付けられていた言葉、民衆の声を吐き出す場で、唯一、”人形劇”という形で、世に吐き出すことを許された者たちが作り上げた、”のどかな幸せの形”その夢を願いにして作られたものがこの、私たちがが今居る、この美しい国……なのです」
僕は、痛ましそうに話す、片腕のユノの言葉に、ただただ、聞きいっていました。
……僕の知らない世界の知らない人々は、”僕らのこの世界を””幸せの国”という形として、理想を夢見て作っていたのだなんて、僕は、知らなかったし、……聞いて初めて、僕らのこの世界は、幸せの一つの価値を持つ、美しいものだったんだって、教えられるような思いだったからです。
……その、僕らの国が、実はそんなに美しい国なんだって、片腕のユノが告げる言葉は、僕にとって、ひどく心地よくて、びっくりするくらい、僕は嬉しかったから、
……僕、すごく、自らの気持ちに驚いたんです。
……僕は、僕が過ごすこの国を褒められればうれしくなるくらいには、この国のことが好きだったんだなぁ、って、そんなことも知らなかったから。
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……そして、それは、同時に、この国の大切な歴史だとも僕は思えたんです。……これは、埋もれさせてはいけない歴史なんじゃないかって、そんな風に思えて。……たとえこれが、作られた人形劇の世界であったって、そんなこと、構うもんか、という気になってきます。
僕らの世界を作った人間って人々が、僕らを作るとき、理想を、幸せを、優しさを形にしたいと思って、創り出したものが僕らの世界ならば、それは、ずっと創られたままに美しくありたいって、僕は思えました。
……僕らの世界を作った人間たちの世が、どんなにつらく苦しくても、僕らはそれを知らないけれど、でも、でも。
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僕の沈んだ顔が明るくなったのを目にして、片腕のユノは、ほっとしたように、こう、僕に告げました。
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「……王子様、あなた様は、この世界の秘密を知ってもなお、希望を持たれて、前を向かれるみずみずしさをお持ちなのですね。さすが美しいこの国の王子様として創造されたお方。……私は、あなた様にお会い出来たことを誇りに思い、嬉しく思います。……あなた様がよろしければ、この国の源の場所へご案内したいのですが、……どうされますでしょうか」
片腕のユノは、そう僕に告げると心配そうに首を傾げたんです。
僕は、迷いなくうなずいて。
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