~人形劇が作られたわけ(1)
「……これは、一体……どういう……」
僕は、混乱する気持ちで、そうつぶやくように言いました。
片腕のユノは、その僕のつぶやいた声を拾って、答えます。
「……文字通り、製造した者、という意味です。……きっとこの本に書かれている内容を私はもう既に知っています。この国の成り立ちを書き出したものでしょう。……驚きました。王宮にこのような物が紛れ込んでいたのですね。……王子様は、この本を燃やしたり壊したりはなさらずに、引きこもるまで悩まれている。王子様は、私にとって信用できるお方です。あなた様に私の知っている限りの秘密をお伝えいたしましょう」
僕は、呆然とした気持ちで、片腕のユノの僕が知っているどのような宝石にも負けない美しい赤紫色の瞳を見つめました。
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片腕のユノの秘密は、それこそ、僕の常識を根底から覆すものでした。片腕のユノが語ってくれた言葉は、この国の成り立ちが、人の手によって作られた人形劇であるだけでなく、
……作られた際の悲しい歴史も教えてくれたからでした。
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「……王子様、この国は、小さな貧しい小国でありながら、もうずっと、戦争がありませんね。ここは海にも山にも面しており、国土は小さいながらも、様々な宝石が採れる自然にも資源にも恵まれた水の豊富な美しい国です。このような国でありながら、何故、この国は攻め込まれないのでしょうか?王子様は、疑問に思われたことはありませんか?普通ならばこのような国、近くの大国にあっという間に攻め込まれ、皆、奴隷にされ、国土は植民地となるのが今の世で当然なのです。そうならない訳を、王子様は考えられたことがおありですか?」
僕は、片腕のユノの言葉に戸惑いながらも、王宮の兵がいつものように言っている言葉を言ってみました。
「……それは……、王宮の兵士が皆、言っているよ。父上が、争いごとを嫌う弱い王だから、他国に攻め込まれぬように周りの国に媚びを売って、この小国を守っていただいているんだ」
僕の言葉に、片腕のユノは、少し哀しい顔をすると言いました。
「……王子様、この美しい国を立派に守られているこの国の王様をそのような言葉でけなしてはなりませんよ。……それに、この国の王が弱いのは、それが”そうなるように作られた人形劇の筋書きだから”なのです。断じて、王様のご意思でもなければ、王様の弱さからくるものでもありません」
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