~悩みと人となりと(15)
(なによ。……この私が頼んでいるのに。あのわからずやのマリオネット)
許のみ と名付けられたガラスのマリオネットは、その透ける腕を思う様振り上げた。カツカツと自らの足に小さなこぶしを叩きつける。……これは、彼女なりの小さな自傷行為。きらきらしたブロンドの髪を引っ張るのはやっぱり嫌で、自分を傷つけることも、これぐらいしか出来ない、彼女にとって、それは一生懸命な彼女なりの精一杯の反抗だった。
**
彼女を創った、おじい様は、……もう彼女の髪を綺麗に梳いてはくれず、彼女にお話を聞かせてもくれない。おじい様は、亡くなってしまったらしかった。……残念ながら、マリオネットとして生まれた彼女は、死というものがよくわからない。……だから、余計に嫌だった。……許のみとして生を受けた彼女の生きている理由が込められている名前がだから呪わしかった。それは、かすかな嫉妬のようなもの。彼女が慕っていたおじい様は、許して貰いたくて許のみを創ったのだよ、と、何度聞かせられただろう。
―—おじい様の思いがとても強くて、私が魂持ちになったのかもしれないけれど……、でも、それはとても悔しい。
**
許のみは、この名前そのものが自分の生きている意味そのものに思えて、重く感じ、それが更に苦々しくて嫌いだった。
―—おじい様はもう居なくなってしまったのに。
……ぼろぼろとまた何度目か知らない涙を流す。不意にまた、あのわからずやのマリオネットの言葉を思い出した。
―—「……君は、初めて会った僕のようなマリオネットに自分の大事な名前を考えてくれって言ったんだ……僕は、それは、あまりよくないことだと思うんだよ……」
**
(何も、何も知らない癖にッ ……初めて会ったとか関係ないのに。……私が初めて自分のことを話せたマリオネットだったのに。)
**
許のみは、ぐちゃぐちゃな気持ちを苛々と思いながら、何度も何度も小さなこぶしで自らの足をカツカツと叩く。小さな小さな許のみが出来る自傷行為。
―—何故、こんなに自らが傷ついているのかを 許のみ自身がわかることが出来ぬままに それを続けて。




