~悩みと人となりと(14)
僕は、恐る恐るバスケットから顔を出した。柔らかな布がさらりと肩口に落ちる。
「……あの、ガラスのマリオネットの彼女って……」
老人は、少しだけ片眉を上げると、笑って。
「おや、やっぱり、知っているのかな?彼女はどこに居るのか、君は、解りますか?」
僕は、考えるようにしながら、彼女と別れた時のことを老人に話した。
「……僕は、悪いことを言ったのでしょうか……?……でも、大事な名前を会ったばかりの僕に乞おうとするなんて、僕は、嫌だったんです」
「……彼女は、よく、ふらっと消えてしまうマリオネットでね……。まさか本当に悩みごとのせいで度々出歩いていた……とは流石の私も思わなかったが……、君と出会えた今となっては……、そういうこともあるのだと解りました。あのガラスのマリオネットは、アルベが創ったものではないのです。……私の祖父が創ったものでね……、偏屈なガラス職人だった祖父は、……心が離れてしまったたった一人の娘に向けて、彼女を創った。その娘は私の母だが……、彼女は今でも健在ですが……残念ながら、祖父は、先日亡くなってしまったのですよ。……マリオネットの君に人が亡くなったと伝えてもあまりイメージが湧かないかな?……君が名前に拘ろうとする気持ちは十分に私も理解出来るが、……そこには彼女の気持ちが含まれていないことが、君には解るかい?一方的な理解だけでは、結局は意味がない。……君は、もう少し、彼女の気持ちに寄り添ってあげる優しさが必要であったのかもしれない。……まぁ、全ては君がどうしたいかを決めることであるけれどね」
僕は、ぼんやりと泣き出したマリオネットの彼女の顔を思い出して、少し俯いた。




