~探していたパズルピースのかけら
その片腕の旅の者は、自らのことを、
「片腕のユノとお呼びくださいませ」
と、名乗りました。
僕は、ふぅ、と少しため息をついて。
片腕のユノからどんな楽しい旅の話を聞いても、どんなに面白い旅の話を聞いたとしても、僕の今の気持ちは、解消されないような気がしていました。僕は、その時、深く深く絶望していたんです。
それで、悪いことですが、僕は、早くひとりになりたいと思ってしまったので、片腕のユノに、少しいじわるな質問をしました。もし、片腕のユノが、半端な答えを返したら、これっきりでお帰り願って、さようならだ。という気持ちでした。
そっと片腕のユノの様子を伺うと、片腕のユノは、かしこまった様子で、微動だにせず、うつむいた格好で礼をとっていました。僕が、楽にしていいというまでそうしているのかもしれません。僕は、首を少しうつむけて、片腕のユノの赤紫色の瞳に目が合わさらないようにしてから言いました。
「……片腕のユノ、と、言ったか、……楽にしてよい。お前に、聞きたいことがある」
片腕のユノは、少し力を抜いたようで、姿勢を楽にしたようでした。僕は、片腕のユノに椅子を勧めると、僕は、片腕のユノの真向かいになるように椅子を引き、丸テーブルをはさんで片腕のユノと向き合う形になりました。
「王子様が聞かれたいことならなんなりと」
と、片腕のユノが申します。
ちらりと、僕は上目遣いに片腕のユノの様子を伺いました。あのどの宝石よりも美しいように見える赤紫色の瞳をどうしても凝視してしまいそうになります。
僕の様子に、片腕のユノは、気づいたようでした。ふっと軽く息をついたようで、口を開きました。
「……王子様も、この瞳が珍しいですか?……無理もない、私も、私のような瞳を見たことはこれまで一度もないのです。……私が旅をするのは、私と同じ瞳を探す為、ただそれだけのような気がいたします」
僕は、その片腕のユノの言葉に、ほんの少しだけ、ひかれるような気がしました。何か、僕が探していたパズルピースのかけらを見つけた時のようなカチッと、はまる感じ。僕は、勢いよく目を見開いて、立ち上がりました。
カタンッと椅子が音を立てて倒れることなく跳ねます。
片腕のユノが、流石に驚いたようにかたまっています。僕は、構わずに叫びました。