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~悩みと人となりと(10)


 「……先ずは、こちらから、かな。クロ、君は、マリオネットたちには、どんな欲望があるか、説明出来るかい?」


 僕は、老人が示した問いに、一瞬虚を突かれたような気がしたけれど、思うように答えた。


 「僕ら、マリオネットの欲……ですか……?僕ら、マリオネットは、快楽を嫌います。堕落は、神の元に行けないとされる道徳を持っていて、最大悪は、別のマリオネットを嗤ったり、自分とは違う個を認めないことです。……ご存じかは解りませんが、僕らの国には……本当に様々な……材質のマリオネットが居て、……僕らは、自分の姿を選べません。だから、物凄く滑稽な様子を崩せないマリオネットや、憤怒の顔をしたマリオネット、常に陽気な顔をしなければならないマリオネット、化け物のような人の形をとれていないマリオネットも存在し、そのような道徳が生まれました。……けれど、僕らの国でも、差別は大きな社会問題になっています。マリオネットは身体に対する痛みは感じませんし、壊れてしまうこと、……つまり、魂の消失ですが、……それらは難しい為、……哀しい話ですが、死にたいマリオネットは死ぬことが出来ません。……それこそ、木くずのようなどこにも自らの意思で行くことが出来ない存在になったとしても、魂はそこにあり続けます。死ねない苦しみに堕とされることは、僕らマリオネットたちにとって、……最大の苦しみとされています。……僕にはよく解りませんが、それら苦しみを味わいたいマリオネットたちも居て、時には人のものを盗むことで、自らの虚無と……言いましょうか、それらを満たそうとする……心の歪んだものもおりますが……、僕らマリオネットたちは、基本的に、あまり欲?というものを持ちません。目の前の小さな幸せ、花が咲いたら喜び、友と気持ちが通じたら嬉しくなり、時には感情が伝わらないことに涙する……そんな静かな日常を送っているものばかりです」


 老人は、まるで信じられないものを見るかのような表情をして、それから、目線を僕から外した。


 「……君たちは、感情の幸福の檻に居るようなものなのか……それは……まさに、アルベが創ったような楽園だ……。……私もそのような楽園に住まいたいものだ」


 僕は、びっくりした顔をした。何故僕の国の社会問題を口にしたら、この老人は感動するのか、……思考が追い付かない。……僕は、それは大変だ。君らの国も大変なんだね。と、共感し、老人の認識を改めて貰えるだろうことを期待して口にしたのに、真逆の反応に、僕の方が戸惑ってしまう。

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