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~悩みと人となりと(4)
ふう、と、ブリュッセル・ゲーンという資産家で(僕の見た姿は本を熱心に選別する人好きのするような老人)は、一瞬部屋の周りのマリオネットに目を向けると、そのまま躊躇した後に僕に焦点を合わせた。考え深げなその一連の行動を僕はなんとはなしに見つめる。揺り椅子に揺られながら、先ほどはあまり注目していなかった為に気づかなかったが、手入れの行き届いた整えられた短い銀髪と小さくも知的な光がともる水色の瞳は、彼を幾分か若く見せているようだった。
「……いやはや、少々、いや、かなり、そう、かなり、驚いてしまってね……まさか、アルべが作ったという
人形劇の……そして、あの話の……マリオネットの……その方が目の前に現れる日がくるなど……想像も……していなかったものだから……長生きは、してみるものだね、……アルべの本は熟読している。君たちマリオネットは、食事をしなかった筈だね……私としてはお客さまを目の前にして、何もお出ししないというのは気が引けるのだが……それでよかったかな……?」
僕は、静かに話す老人の順応性の早さに内心かなり驚きながら、彼の調子に合わせるようにまるで気楽に、世間話をするみたいに返すことにした。僕は僕で、何故このような場所にあのマリオネットが僕を飛ばしたのか知りたい気持ちでいっぱいだから。




