記憶喪失
ハルは気絶した美少女をなんとか家まで抱えて帰ることができた。しっかし、息切れがひどい……。こんなに重労働したのは何年ぶりだろうか…………?
「ぜぇ、はぁ…………やっと着いたぜ。」
こんな時間だ、誰も起きていない。少々うるさくても大丈夫だ。
「はぁ、はぁ…………」
やっとのことで階段を登り自分の部屋へ到着した。もうスタミナはゼロだな…………。
美少女は仕方がないのでベッドに寝かせてやり、毛布もかけた。スースーと寝息をたてている。しばらくは起きそうもないな…………。美少女のおでこが赤くなっていたので冷蔵庫から氷のうを取り出しておでこに乗せた。
「では、さっそくご飯タイムと行こうじゃないか~!」
レジ袋を開けると…………何もかもがぐちゃぐちゃになっていた。
「え、えぇっーーー!?な、何でこんなことに!?」
それはそうだ、坂道で調子に乗って走ったり美少女に床ドンされたり美少女をお姫様抱っこ&おんぶで運んできたのだから……おにぎりがひしゃげナポリタンが右端によりチーズケーキがぼこぼこになるのも無理はないだろう…………。
「……くっ……………まだ……………大丈夫……だ」
ハルは泣きながらひしゃげてしまったおにぎりを拾い上げ形をなんとか整える。
「味は…………変わらないからな………そうだろ………」
なんとか三角形になったおにぎりを口に運ぶ、鮭イクラは俺のなかでは一番のお気に入りなのだ。
「うめぇ………!やっぱ形より味だもんな…………」
すべてのお米にありがとう、鮭とイクラにありがとう。お米農家さんにありがとう。漁師さんにありがとう。コンビニエンスストアにありがとう。
心のなかで感謝しながらおにぎりを完食。さぁ次は何を食べようとレジ袋をがさがさしていた時。
「…………あ、あの」
後ろから小さな声がした。
「うわあぁっ!?」
驚きすぎて大袈裟に悲鳴を上げてしまった。
「ひゃあっ!?な、何ですかいきなり大きな声だして‼」
「ご、ごめん…………」
「それより、あなたは誰?ここはどこですか?先程の場所とは別の所みたいですが…………」
「あーー俺の名前は春野 ハル………まぁ、ハルって呼んでいいよ………そしてここは俺の部屋。君が窓におもいっきり突っ込んで頭打って気を失ったからここまで運んできたんだよ……。」
「…………え」
美少女はポカンと口を開けている。
「……もしかして……覚えてない、とか?」
「むむむむ…………………はい、全く覚えてません……。私が何故ここにいるのか、何をするためにここへ来たのか……さっぱりです」
これは記憶喪失なのか…………!?
「………と………ところで名前は覚えてる……?」
「あぁ、名前は覚えています。私はミラ・スカーレット 鏡の精霊です。」
「…………は?」
名前的にも日本人ではないことは分かった、見た目も日本人ではないことは分かっていた、だけどその口から精霊なんて単語が出てくるとは…………
「…………か、鏡のせいれい……?」
「そうですが……何か?」
「いやいや、この世界に精霊なんていないって!」
「え…………嘘でしょう!?精霊がいなければどうやって生きていくんです!?」
「電気の力とか人間の力とか………………じゃあ、君が本当に鏡の精霊なのか証拠見せてくれよ!」
「………………いいでしょう。そこまで言うなら……」
美少女はゆっくりと立ち上がる
「これ、ありがとうございました。」
氷のうをハルに渡して小さな鏡の前にたつ。
「ミラーワープ!!!」
すると小さな鏡がまばゆい光を放ちだした。
「……………………!?」
「これはミラーワープといって鏡の空間を自由に出入りできる鏡の精霊だけの特権です……」
美少女は細長い手を鏡に向かって突っ込もうとした、が
「きゃああ!?」
「うわぁあっ!?」
まばゆい光を放っていた鏡から稲妻が走り美少女を弾き飛ばした。ハルは美少女の下敷きになって壁に叩きつけられた、まさに本物の壁ドン………………
「……入れない……なぜ?」
「そういや、あのときも戻れないって言ってたけど…………」
「…………………………戻れない?」
はっと気づいたように閉めきったカーテンを開ける。
「…………やっぱり、私はこの世界の住人ではありません。ここは異世界ですね………鏡に入れないのは…何者かに妨害されているとしか言いようがありません…………………とにかく私は帰らなければ…………」
美少女はカッコいいことを真剣に呟いた。
その時、ぐううーっと針積めた空気にそぐわない音が響いた。
読んでくださりありがとうございました‼まだまだ続きます!