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トキメク女

アイツは私の事、どう思っているのかな?


アイツと言うのは、私達同期の出世頭で営業本部長の佐々木優介さきさゆうすけだ。

佐々木との出逢いは、私達、新入社員の2泊3日の入社前研修だった。

佐々木は、その時すでにリーダーシップを発揮して、私達新入社員を束ねる存在になっていた。

それに嫉妬したのか、他の男子達が反発したが、まるで上司が部下をなだめる様に、そして私達の学生気分を引き締め直す様に研修課題をこなしていった。

気が付くと、私達の女子部屋ではアイツの話しで持ちきりだった。

そして、最終日を迎えた朝、佐々木に声を掛けられた。


「倉敷ってさぁ、付き合ってる人とか居んの?」

ドキッとした。正直この頃、悟とは付き合っているとも、ないとも言えない状態だった。でも悟の事は好きだったので「一応…」と答えた。

「そっかぁ、だよなぁ」

この返答に、またまたドキッとした。


この後、無事入社式を迎え、私達はそれぞれの部署に配属となり、暫くしてからアイツは経理課に配属になった津山美登里つやまみどりと付き合う様になった。

美登里は、同期の中でも特に親しい間柄だった。そのお蔭でアイツとの報告や相談を、その度に受けた。


その後、28才の時にアイツが課長に昇進したのを期に二人は結婚した。私も同時に係長に昇進して、一番結婚を意識した時期でもある。

幸せな二人に、突然不幸が訪れたのは2年後だった。美登里が子宮頸がんになったのだ。

当時のアイツは、その事を自分のせいと責めて、かなり落ち込んでいた。

そして闘病の甲斐もなく、2年後美登里は亡くなった。

お葬式は社葬として行われ、出席した私は涙が止まらなかった。

そして、2週間後、アイツは出社してきた。

まるで、何事もなかった様に…

そして2ヶ月後…皮肉な事に、私は課長に、そしてアイツは部長に昇進した。



そんなアイツが、落ち込んでリサイクルショップを出た私に声を掛けて来たのだ。

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