真相を知る女
あれから、怒りの爆発力だったのか?なんとか新しいパッケージデザインを生み出す事が出来ました。恐らく"おみくじガム"の様な大ヒットは無理だろうけど、私なりにいい仕事が出来たと思っています。
ふと、リサイクルショップのおじさんが言った最後の言葉が蘇りました。
「またコイツを愛せると思ったらおいで」
そんな事分かる訳ないって言ったら
「その時が来たら分かるよ」と言っていた。
今がその時?…な訳ないよね。
ほとぼりも冷めただろうし、あのバーに行ってみました。
「いらっしゃいませ」
あの時のバーテンさんだ。少し気まずいな。
「お久し振りですね」
覚えていたか。ますます気まずいな。
「あの日は大丈夫でしたか?」
やっぱり覚えていたか。おそるおそるお会計はどうなったか聞いてみた。
「お連れ様がお支払に…お帰りの際も付き添われていましたよ」
その人物について聞いてみると
「男性の方で、お客様の後に入って来られて、お客様のひとつ空いた席に着かれて"連れだ"と仰って、後は黙って飲まれていました」
年格好を聞いてみたが、間違いなく悟だ。この店の事は知らない筈なのに…じゃあ、送って行ってくれたのも、ベッドに寝かせてくれたのも…そして最後に鍵を掛けてドアポストから?…
でも、そう考えると全て辻褄が合う。
なんて事だろう。携帯を取りだし悟に掛けてみた。でも、番号を換えたのか繋がらなかった。
そうだ!家だ!
急いでお会計を済ませてタクシーを拾った。
懐かしい部屋…10年近くも悟と暮らした部屋…
呼び鈴を鳴らしてみた。でも反応がない。
よく見ると電気会社の札が付いている。
悟~っ、何処行ったのよ~っ?




