二日酔いの女
私は、倉敷彩矢。
35才、独身。
現在、重度の二日酔いと格闘中です。
昨日は、誰が何と言おうと、やけ酒以外の何者でもありませんでした。
そう…あんな奴と再会なんかしなければ……
あんな奴って……宮本悟、38才、バツイチ(らしい)。
3年前に別れた私の、所謂元カレってヤツです。
悟と出逢ったのは、私の21才の誕生日前日。その時は、運命の人としか思えなかった。
悟は、会話の内容が豊富で、服装のセンスも良く、見るからに男女共に好かれそうな感じがした。
初めての出逢いから、3日目には、ホテルに行った。
そのままズルズルと、付き合っているのか、いないのか?はっきりしない関係が続いたまんま、3年後には同棲が始まった。
勿論その間、結婚を考えなかった訳ではない。
只、同棲を始めて半年位経ったある日、悟は勤めていた一流商社を辞めてきたのだ。
「俺さぁ、やりたかった事があるんだ」
私には、到底理解出来ない事だった。
実際やりたかった事の内容も、始めは事業から始まり、その後、漫画家になりたかっただの、本当は俳優だなど、一向に定職に就こうとしなかった。
彼は、確かに才能に恵まれた人だったし、そのうち何かに目覚めて成功を修めると信じていたし、それまでは私が支えようと思っていた。
一方の私は、大卒後、中堅だが関西以西に住む人なら、思わず「懐かしい~」と言って貰える位の製菓会社に就職した。
パッケージデザイン部に配属され、入社6年目に担当したお菓子が、創業以来の大ヒット、商品自体が良かったのか、パッケージが良かったのかは解らないけど、社長賞も頂き、係長にも昇進した。
デザイン自体、悟のアイデアをかなり参考にさせて貰ったし、賞を頂いた時は、二人でお祝いもした。
転機は、私が32才で課長に昇進した時だった。
相変わらず目標がハッキリしない夢を追い続ける悟に、途端に醒めてしまった。
「悟と一緒にいる意味が判らなくなった」
そう言って部屋を出てしまった。




