表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/111

内通者③

「チクショッ! チクショッッ!! チクショッッッ!!!」


僕は、彼女のことが苦手だ。だけど、嫌いというわけではない。信じていなかったわけではない。頼りにしていなかったわけではない。


でも、今、そのすべてが裏切られた……。


この街にひしめき合うビルの隙間、路地裏を僕は駆け出す。


置いてあったゴミバケツが体に当たって倒れても、気にせずに、足を動かした。


後ろなんか見ている暇はない。


ヴァサラを持っていない僕が彼女から逃げ切ることは不可能だ。


彼女は、たしか、パワーとスピードの両方を使えたはずだ。


僕のことを見つけるのは時間の問題だろう。


でも、勝機はある。



僕の右手を見る。


細くか弱く女の子のような手……。


この手が切り札だ。


ヴァサラは、武士の体から発する「電波のようなもの」で、脳と通信して動かす道具だ。


そして、電波と同じく、繋がりが強い方の「それ」が、ヴァサラの主導権を握ることができる……。


彼女のヴァサラ支配率は90と数%……でも、僕のは100%超。


遠距離なら、太刀と接触している彼女が主導権を持つ。


でも、近距離なら、僕が彼女の太刀の主導権を手に入れることができる!


一瞬だ、登子ちゃんが僕に一太刀浴びせようと、僕に接近した一瞬……そこが勝負だ!


「よし!」


僕は、右に曲がり、元いた道路に飛び出す!


……しかし、見渡す限り、そこには誰もいなかった……。


すると、声がした……。


それはどこからともなく来る声……。


それは……僕の中から直接脳に伝わる声……。


それは言った…………「上だ」と。


僕が上を向くと、ビルの屋上に、一人の少女……そして、太刀から放たれた光の斬撃……。


それは、弧の形を崩すことなく、空から僕めがけて、降ってきた……。


▷▷▷▷


「さて、それではどうしますか? 直義さん、義貞さん」


佐々木が、二人に問いかけた。


直義と義貞は、大広間のソファに腰掛け、前のソファに座る佐々木と、テーブル一つを間に置いて、向き合っている。


義貞が言った。


「六波羅探題の人に言って、高氏を見かけたら、保護するようにすれば……」




「今、六波羅探題軍は、四条御所の包囲、皇族の監視、そして、本部の護衛に全勢力を注いでいます。今から、高氏さんを保護することは難しいです」


「……」


「でも、四条御所の近くにいるやつに、高氏が来たら保護するように伝えたら……」


「そのとき、高氏さんは、その軍のヴァサラを奪い、局さんを助けるための武器にするでしょう……」


「……」


「テメー、直義! さっきから何黙ってやがんだよ!?」


義貞が怒鳴ると、直義は、顎に当てていた手を膝に置き、提案した。


「佐々木さん……俺の知り合いに、今、兄貴を助けに行ける人がいます……」


「本当ですか? 直義さん?」


「マジかよッ!? 直義、なんで言わなかったんだよッ!?」


義貞は、ついついソファから立ち上がる。


「それは、俺の中であまり使いたくない手段だったんだよ。でも、この場合使うしかないだろ?」


「ちなみに、直義さん……その人物というのは……」


佐々木と義貞は息を呑む。


直義は、口を開いた……。


「その人物とは…………」














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ