青春の始まり⑥
バァァァァァァァァァァァァァァァァァン!
まるで雷鳴のような音が響きわたる。
そして、ビュュュンと、風を斬る音も耳を劈く。
「テメェ、二年のくせにッッッ!」
「あれ? 遅いですよ、先輩」
義貞は、まるで光のように、常人の目には見えない速さで直義に襲いかかる。
しかし、常人には見えないが、直義には見えるのだ。
義貞が斬りかかると、直義は、左手を義貞に向けて、黄色がかった半透明のシールドを展開し、相手のヴァサラを受け止める。
その衝撃で、粉塵が舞い上がり、バチバチと火花が散る。
「やばいよ! あいつらをどうにかしなきゃ!」
「でも、あいつらは、三年と二年のトップだぜ! 俺らじゃ相手にならないよ!」
「しかも、義貞は、パワーをあげることと、自分のスピードをあげることを同時にやってるんだぜ? 俺たちなんて、パワーをあげるか、スピードをあげるかで精一杯なのに……」
「直義も、二年で、パワーをあげながら、シールドも展開できる……。義貞も、三年になってから習得したのにな」
周りは見守るしかなかった。圧倒的な力を前に成す術がないのだ。
状況としては、ずっと、攻撃する義貞を直義がシールドで受け止めている形だ。
このままなら引き分けで終わるが、彼らはそれで終わらせるつもりはない。
義貞は、直義のシールドを壊すタイミングを見計らっている。というのも、そのシールドを壊すためにはスピードをあげるのに使っているヴァサラ遺伝子をすべてパワーに使わなければいけないからだ。
つまり、スピードを犠牲にしなければいけないのだ。
そうすると、今みたいに、直義の攻撃を避けることはできない。
そして、直義は、そこを狙っているのだ。
義貞がスピードを犠牲にするとき、それが絶好のチャンスなのである。
(はぁ……はぁ……、流石に、これだけシールドを発動すると、体力がもたないな……。三年一位は伊達じゃないな)
そう思っていると、額から流れた汗が直義の左目に入った。
すると……。
「オラよッッッ!!」
「ぐぅぅッッッ!」
直義の左手から、義貞が襲いかかる!
直義も、 間一髪、シールドを展開する!
そして、踏ん張り、耐えようとする!
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!」
「おらあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!」
しかし、即座に発動したため、十分な強度を持たなかった。
ビリリリリッッッッ!!!
シールドに細かいヒビがいくつも入る!
「ぐはぁッッッ!!!!!」
そして、 シールドの破壊とともに、直義は吹き飛ばされる!
(マズイッッッ!!)
そう思ったが、宙に舞った直義の体は、自由をきかずに、地面に叩き落とされる!
「おいおい、さっきまでの減らず口はどうしたんだよ!」
義貞は蔑んだ笑顔を見せる。
杖のようにヴァサラを使い、少しずつ、少しずつ、近づいて行く。
「そっちこそ、ヘトヘトじゃん。いい加減、負けちまえよ!」
自分を奮起させるように叫び、直義は立ち上がる。
(おいおい、あれで立ち上がれるのかよ……。本当に、化け物だな)
義貞はそう思った、だが……。
(だけど……)
「それでも、負けたくないんだよッッッ!!」
義貞は、スピードを上げ、直義に真っ向から勝負する。
そして、直義も、ヴァサラのパワーを最大限に上げる。
「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!」」
二人は、叫び、すべての力をだそうとする!
そして、二人がヴァサラを振るった途端、二人の間に人影が写る。
それを二人が認識した瞬間、突如、水色の半透明の半球体が現れ、それがどんどん巨大化し、二人を吹き飛ばす!
二人は、ボロ雑巾のように何の反応もなく、地面に回転しながら何度も叩きつけられる。
そして、直義は意識が朦朧とする中、その人影を見て、つぶやく。
「兄……ちゃん……」