六波羅探題⑥
「あ、お帰り、事情聴取どうだった?」
「あ、はい、ちゃんとできましたよ。加賀さん」
「俺たちゃ、ガキじゃねぇんだから、その聞き方はどうなんだ?」
「そうですよね、義貞先輩」
義貞と加賀が、笑い合う。それにつられて、直義も少しの笑みをこぼす。
しかし、義貞のその顔は引きつっているようにも見えた。
「そういえば、皆さん、この後、どうなさるつもりで?」
「僕たちは、今から、このホテルにチェックインするつもりです」
僕は、佐々木さんにチケットを見せる。
「ああ、私たちが運営してるホテルですか。なら、今から、部下を呼んでその荷物をホテルに送っておきますよ」
「いいえ、そんなことしなくても!」
「高氏さん、私たちの仲に、遠慮は無用ですよ」
「じゃあ、お願いします」
僕は佐々木さんに頭を下げる。同じように、皆も、感謝の意を述べてから、頭を下げた。
「じゃあ、皆さんは、京の観光を楽しんでください。それ以外のことは、私たちにお任せを」
佐々木は、僕たちに向かってそう言った。
それを見た、直義の肩の力が少し抜けたように思える。いろいろと旅行について心配していたのかな、と僕は思った。
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「円喜様、高氏様方が京に着いたようです。さらに、大仏様もこちらに向けて出発なさったようです」
「これまでは計画通り……源氏の若造たちを一網打尽にできるときがくるとはのう」
白ひげの老人が、使者の伝言に、ニヤニヤしながら受け答えする。
「しかし、彼らも武芸が達者……そう簡単に行くとは……」
「なーに、策ならあるわい」
そのタキシードに似合う赤ワインをすすりながら、円喜は、窓の外の月を見上げた。
それが円喜の計画のように少しずつ満月まで近づいていっていた。
「もう、幕府は儂のもの……儂のものに仇なしうる連中は、嫌いじゃ。今のうちに、潰しておかねばのう」
円喜の眼…………それは老いぼれとはかけ離れた、野望と殺意が光る眼であった。




