表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/111

六波羅探題④

「なんで佐々木さんがここに?」


僕はハンバーグへの手を止め。佐々木に話しかける。


あのあと、僕らと同じ丸いテーブルで食事することとなった、佐々木さんも、アーク型の椅子の端っこで人の顔ほどの大きいパフェを食べている。


僕と佐々木さんは顔見知りである。


というのも、佐々木も立派な源氏。僕や義貞とは、親戚にあたるのだ。


僕の家は、親戚同士の交流が度々あるので、佐々木さんともよく合っていた。


「いやぁ、ちょいと仕事でしてね。高氏くんたちに、まさか会えるなど予想だにしてませんでした」


同じ高氏に、高氏と呼ばれるのは、違和感がある。あまりない名前であるから余計である。


佐々木さんは、僕とは歳が十つほど離れているが、誰に対しても敬語を使う。

いつも、礼儀正しいだけに、怒るとさぞかし恐ろしいだろうと思う。


「仕事って言うのは、見送り……ですか?」


直義が聞く。ファミリーレストランに、似合わない、険しい表情をしている。


「お、よく知っていますね。そうなんです。今、大仏(おおらぎ)様のお見送りをしてきたところなんです」


「大仏って、あの大仏維貞(おおらぎ これさだ)さんですか〜!!」


登子ちゃんが、その名前を聞いて驚く。


六波羅探題には、北方、南方の二つがあり、維貞さんは、南方のトップなのだ。


「そんな南方のトップが、どこに行ったんですか〜?」


「鎌倉ですよ。幕府に呼ばれたそうですよ」


仕事で、六波羅探題の人が鎌倉に来ることはよくあることだ。


しかし、気になる。なんで、このときに……。


自分で言うのも、なんだが、僕の足利家、義貞の新田家は、この国で、トップクラスの家柄。しかも、義貞は、次期当主だ。


維貞さんが、鎌倉に行ったということは、京の守りが薄くなったということ。


その危険な時期に、何故、幕府は、僕らを京に送ったのか…………。


「どうしたの、高氏くん? ハンバーグ冷めちゃうよ?」


局さんが心配してきた。熟考していたので、全くハンバーグが減っていなかった。


周りを見ると、直義と義貞は、すでに食べ終えていた。

女性陣も、あと少しで、完食しそうだ。


「あっ、すみません」


僕は、急いで、ハンバーグを胃にほおりこむ。頬が膨れて、まるでハムスターみたいになった。


「そんな焦らなくてもいいですよ、少し直義くんと義貞くんとで用事があるので、それまでここで待っていてもらいたいので」


「用事っていうのは?」


「事情聴取ですよ。犯人は署に送られましたが、お二人も近くの交番でいいので事情聴取をしてもらいたいのです」


僕の質問に、佐々木さんはそう答えた。


「いいぜ」


「大丈夫です。じゃあ、兄貴。俺は、義貞と行ってくるから」


佐々木は、あんなにあったパフェをたいらげて、席を立つ。


登子ちゃんも、二人を通すために一旦、席を立つ。


二人は、登子ちゃんに「ありがとう」と言い、佐々木さんについて行く。


そのとき、加賀がボソッと小さくつぶやいた。


「事情聴取って、その場でやれたじゃない」


「なんだって?」


「なんでもない」


なんて言ったが聞こえなかったが、それ以上、僕は言及しなかった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ