六波羅探題②
京に着いた。
駅を出ると、僕らが描く「京」そのものがそこにはあった。
僕らが描く京。それは、高層ビルが所狭しと並び、車が大変混雑し、最先端技術を纏った人たちが歩道にはみ出しそうになりながら歩く、大都会である。
この国の全ての富がここには集まっている。技術も、京とそれ以外の土地では、半世紀ほどの差があるとも言われている。
もちろん、それは、公開されている範囲の話で、幕府が持つ非公開の技術は、京のそれよりも一世紀も差があるのだ。
それでも、京が最先端の技術を所持していることは、疑いようのない事実だ。
さらに言えば、この地域には、皇族がいる。彼らは、この国の創造主であり、僕らは小さい頃から、皇族は神の子、神の血を引く一族だと言われている。
こんなに、科学技術が進んでいるのに、神という非科学的なものを学校の教育に入れるのはどうかと思うが、それくらい偉大だと言いたいのだろう。
しかし、その皇族に逆らうもの。それが、幕府でもある。
正確に言えば、逆らわざるを得なかったことがあるものだろう。
僕が生まれる前、後鳥羽上皇が幕府討伐に乗り出した。しかし、幕府が極秘に作っていた最先端のヴァサラを持った、武士たちに、皇族が勝てるわけがなかった。
この国の主を皇族としているのは、建前で、事実上は、幕府が完全に実権を握っているのである。
しかし、それでも、神の子たる皇族の権力は強く、京はそれにふさわしい場所だと僕は思う。
「六波羅探題の受付に行くまで、まだ時間があるね。これからどうしよう?」
僕の提案に、加賀が答える。
「とりあえず、昼飯食べようよ」
「賛成!」と、右手を挙げながら跳ねる登子ちゃん。
その他の皆もそれに賛成した。
セイナちゃんも、こくんと頷く。
とりあえず、セイナちゃんは、お母さんの待ち合わせの時間まで、僕らで面倒を見ることになった。
知らない人たちに着いてきていいのか、と疑問に思ったが、今回は致し方ないだろう。
今は、片手でぬいぐるみを抱えながら、局さんと、手を繋いでいる。
ロリータファッションのロングスカートと、白いワンピースのコラボは、奇妙に合っていいて、面白い。
「……」
「……」
ん?
僕はあることが気になった。
「どうしたの? 直義と義貞、さっきから、静かだけど……」
「ん? な、なんでもないぜ……な!」
「あ、あぁ……兄貴、考えすぎだよ」
「そう……?」
明らかに不自然だ。いつもの二人なら、僕らの話を聞く暇があったら、喧嘩しているはずである。
でも、僕は、深く考えなかった。いや、考えたくなかったのかもしれない。
このとき、僕は、小さいながら、胸騒ぎをしていた。
この前の事件と同じように、だ。




