表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/111

少女と謎⑤

「どうしたの?」


「…………」


少女はぬいぐるみを強く抱きしめる反応をした。


それは恥ずかしいことを示していると僕は解釈した。


早くお母さんのところに……そう思ったとき……。


「出発シマース!」


ヒューマノイドのアナウンスが、列車の中すべてに響き出した。


「あ……」


僕の鼓動が早くなり、息苦しく感じる。


大変だ、どうしよう?


少女のほうを見ると、格別慌てている様子もない。


年長の僕のほうが慌てている場合ではない。


冷静に、冷静に……。


とりあえず、なんでここにいるのか聞いてみよう。


「どうしてここにいるの?」


「……ここは、京行きの電車じゃないの?」


ソプラノの可愛い声が僕に質問する。


大きな目といい、筋の通った鼻といい、本当に、人形みたいな()だな……。


「まあ、そうなんだけど……これはお兄ちゃんたちしか乗っちゃいけない列車なんだよ」


「なんで……?」


なんで……ときたか……。


たしかにこの言い方だと、僕がこの娘を仲間ハズレにしているように聞こえてしまう……。


でも、この言い方だと、この娘は、京行きの列車に乗りたかった。


そして、勘違いで、このホームに来てしまった。


あと、聞きたいことは……。


「お母さんは?」


彼女は首を横に振る。


「一人で、京に行くの」


彼女は、僕の目の前に、人差し指を立てた右手を差し出す。



さて、どうしよう? 彼女に悪気がなかったとはいえ、彼女は間違えたことが一つある。


その間違えを僕は見逃したいが、果たして、ヒューマノイドは、許してくれるのか……。


もう一度彼女のほうを見ると、上目遣いという姑息な手段を使っていた。



うーん……まあ……仕方ないか。


「お兄ちゃんたちと一緒に、京に行こうか!」


「うん!」


彼女はパッと明るい笑顔を見せて、頷いた。



すると、その声に反応して、局さんが部屋から出てきた。


「どうしたの?」


「いや、この娘、間違ってこの列車に乗っちゃったらしくて……でも、京に行くのは同じだから、一緒に行こうって提案したんですよ。


まあ、ヒューマノイドには、どうにか許してもらおうと思ってて」


「そうなんだ。


よろしくね!」


局さんは、少女に向かって言った。



「それより……」



と局さん。



「高氏くんは、トイレ行かなくて大丈夫なの?」


「あ…………」



そうだ……僕には、もっと先に解決しておくべき問題があったんだった……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ