少女と謎④
細い通り道を手すりに捕まりながら、下っていく。
小さいLEDが、手すりに平行した点線となって、設置されている。
その階段は長く、ジグザグとしていた。
たぶん、地下に入ったんじゃないか?
ヒューマノイドがLEDが途切れた暗闇に足を踏み込むと、その真上の電灯が光り、連鎖的に奥に向かって、電灯がつく。
そこには誰も使っていないホームがあり、柱には「0」の文字が記載されていた。
「ココガ0番ホームデス」
なるほど……隠し通路だったのか……。
まさか、ゲーム以外で、このような隠し通路に出会うとは思わなかった。
しかし、幕府は、一般に広まっていない高度な技術をいくつも持っているから、僕らでは考えつかないようなことができる。
そういう意味では、分かっていたことだ。
僕らが分かるわけがないということを、僕は分かっていた。
無知の知というやつである。
最後尾の直義が降り終わったとき、遠くから列車特有のガタゴトという音が聞こえてきた。
その音が段々と大きくなっていく。
階段を降りたときの左側にしかない、線路を僕は見る。
すると烏のような漆黒が僕らの目の前に現れる。
突風が僕らを襲い、前髪が退こうとする。
その風が病んだ頃合に、ヒューマノイドが喋り出す。
「コチラガ、皆様ガ乗ル列車デス!」
▷▷▷▷
乗ってみると、そこは今までに乗った列車とは比べものにならなかった。
八両編成のこの列車は、真ん中の三両が僕らが寝泊まりする施設になっており、凸の空間に部屋が、凹の空間に廊下があり、凹の端っこにある扉が、隣の車両と繋がっているようになっている。
その他にも、レストランや、小さいカジノがある。
こんな豪華な車両で、京都に行くとなると、心が踊ってきた。
とりあえず、僕らは、それぞれの部屋に行った。
進行方向から、義貞と直義の部屋、僕と局さんの部屋、加賀と登子ちゃんの部屋となっている。
義貞と直義を同じ部屋に入れていいのかどうか、迷ったが、なんだかんだ言って殴り合いにはならないので、こういう結果になった。
それに、ベッドが二人用であることも理由の一つだ。
「それにしても綺麗だね」
荷物を置きながら、局さんが話しかけてきた。
「そうですね、テレビも壁いっぱいのスクリーンで見れますし、エアコン、冷蔵庫も完備されてますから、苦労はなさそうですね」
「この列車って、リニアモーターカーじゃないよね?」
「はい。昔ながらの蒸気機関で動く列車ですね。だから、そんなに早く京に着かないので、ゆっくりしていきましょう」
「そうだね」
そんな話をしながら、僕は早めに荷物を置き終わった。
局さんは、荷物が多いので、もう少し時間がかかりそうだ。
「すみません、僕、お手洗いに行ってきます」
「はーい」
そういえば、トイレに行っていなかった。尿意がこみ上げてきたわけではないが、たぶん気づいてないだけだろう。
僕は、扉を開けて廊下に出る。
すると、目の前に、小柄な少女がクマのぬいぐるみを抱えながら立っていた。




