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青春の始まり③

「そうか、今日は三年との合同演習じゃん」


加賀は「はぁ……」とため息をついた。


特殊な合成繊維で作られた、紫色の半透明なスーツが張り付いて、加賀のボディラインはあらわになっているが、加賀はそこらへんは男らしいので気にしないのだ。



二、三年の各々上位三十位は、毎週金曜の昼食のあとの授業で、合同演習をするのだ。


その演習は、鶴岡高校にある、校庭で行われる。

鶴岡高校の校庭は、海沿いに設立された校舎に隣接する形で、海を埋め立てて作られた。


大きさは江ノ島と同じことから、「第2江ノ島」とも呼ばれている。


「それにしても……なんであいついるの?」


加賀は、中肉中背の青年に目を向けた。


彼こそ、この国の頂点に君臨する、北条高時である。


残念ながら、誰にもそんな風に見られないのだが……。


「仕方ないですよ。政治は部下が独占しちゃってるから、やることがないんですよ」


「たしかに、幕府の執権、つまりこの国にトップなのに、この学校の校長やってるからね……。って、登子(とうし)ちゃん! いつの間に!」


「どうも〜」


赤橋登子は、柔らかな笑顔で、両手の指を軽く交差させながら、お辞儀した。


「自分が言うのもなんだけど、女の子がそんな格好して……恥ずかしくないの?」


「恥ずかしいですけど……仕方ないですよね。これがヴァサラから身を守る最高の装備なんですから」


「たしかにね……。あれ? 登子ちゃんって、今年入学だよね?」


「はい。でも、自分で言うのもなんですけど、成績が良くて二年に飛び級したんですよ」


「流石、北条家の血筋はすごいね」


加賀は、自分の遺伝を恨んだ。

というのも……。


「まあ、成績と言っても、ほとんどヴァサラ遺伝率が高い、北条一族の血脈のおかげですからね」


「まあね……。でも、なんでヴァサラ遺伝子なんてものができたんだろうね……」


「教えてやろうか」


と、豪傑そうな一人の男がニヤニヤしながらやってきた。


「あっ、新田さん。お久しぶりです」


「ちっ、新田かよ」


「登子ちゃん、久々だね。加賀は何か言ったかな?」


「いっ、いいえ! 何も!」


「ならいいんだが」


そして、新田義貞(にったよしさだ)は、説明し始めた。


▷▷▷▷


遡ること、数百年前。

平将門が関東で、皇族に反乱したときに、たった1人で、関東を制圧したんだ。

それはもう圧倒的な強さで、1人で何百、何千の兵と同じくらいの戦力だって話だぜ。


そのあと、なんとか平将門を殺害で事件は、収まったんだが……問題はそのあとだ。


平将門を解剖したところ、ある遺伝子が見つかったんだ。


それがヴァサラ遺伝子。


将門の強さは、このヴァサラ遺伝子を利用することにあったんだ。


なんでヴァサラ遺伝子って言うかってのはな、そのときの将門の使って刀が「ヴァサラ」って名前だったからなんだよ。

今でも、俺らが使う武器も全部ヴァサラっていうだろ。それはそこからとったんだよ。


で、この武器は、ヴァサラ遺伝子によってとんでもない力を発揮するんだ。


その武器を手にとった将門は、光のように速く、半透明だが岩より何倍も堅いシールドを展開し、その刀も山をも切り裂く威力を持っていたんだとよ。


何? それは中学のときにもう習った?


もしかしたら、忘れてるかもしんないと思って教えてやったんだよ。親切だろ?


で、将門以外にも、ヴァサラ遺伝子を持ってる人がたくさんいたんだ。そいつら、つまり、俺らの先祖が元祖「武士」だな。


そこで貴族のやつらは、自分たちの護衛として、そいつらを利用しようとしたんだよ。


だけど、問題が発生した……。


科学者は、ヴァサラの複製を試みたが、何度改良しても、将門ほどの力を持つやつが現れなかったんだ。


それがヴァサラのせいなのか、使い手の問題なのかは分からないがな。


まあ後々、少しずつ分かってきて、武士は、体のヴァサラ遺伝子を全部使える訳ではない。

武士が使える自分のヴァサラ遺伝子の割合ってのがあるんだな。


普通は、50%で、60%あれば高いって言われるんだよ。


しかし、その中で80%も使えるやつが現れた。


それが源氏と平氏だ。


彼らは、武士のトップに君臨し、貴族が作り出した腐った社会をぶっ壊し、この武家社会を作り上げたんだ!


ぐぁっはっはっはっ!!


その源氏の正統な子孫がこの俺、新田義貞だ!


もちろん、三年ではクラストップ!

エリート中のエリートの俺に勝てるやつなんて誰もいないんだよ!!


▷▷▷▷


……って、結局自慢かよ、と加賀は思った。

まあ、所詮、新田家は勢力的にも弱いし、ただ血筋にたよってるだけだもんな。声には出せないけど。


「すごいですね」


登子は笑顔で、対応した。

心ではどう思ってるか知らないが、話し手が気持ち良く話せるようにする彼女の対応に、加賀はいつも感心していた。


まあ、私はできないけどね。


「まあな」


と、義貞は腕を組みながら、ドヤ顔を決めた。


すると……。


「何がエリートだよ。恥ずかしいな」


と、声がした。


3人が声のするほうを見ると、長身で、細身、そして猫背の男が首の後ろに手を添えていた。


「あっ、直義さん」


うわぁ、あっちゃいけない奴同士が会っちゃったよ……。



加賀は、直義と義貞の顔を交互に見た後に、額に手を当てた。



















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