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Blue Scream③

あれから何分たっただろう。


僕はずっとシールドを張り続けて、音から身を守っている。

耳栓をしていないのに、シールドを解除したら、超音波で頭がいかれて、立ち上がることすらできないだろう。


僕と一親さんは立ち位置から一歩も動かずに戦いは続いている。


一親さんのあの光弾を放っても、僕に通用しないことを、彼も分かっているのだろう。


観客にとっては、つまらない地味な戦いだろうが、僕にとってはこの状態が続いたほうが好都合だ。


僕はちらっと観客席の上に設置された、ガラス張りの部屋を見る。中には守時さんが観戦していた。


加賀は慌てて正確には言わなかったが、きっと時間稼ぎとは守時さんの足止めのことを言っていたのだろう。


守時さんに加賀の行動がバレたことを考えると…………ゾッとする。


だから、僕は加賀の命を守るためにも、このお願いごとを遂行しなければならない。


目線を下にそらすと、さっきまで耳を塞いでいた観衆が手を膝においていた。


視線を一親さんに向けると、パラボラが解除されていた銃口から中身が空の光弾を放った。


そのときはなんで中身がないのか分からなかったが、その理由が今分かった。


その光弾は、鉄壁のはずの僕のシールドに易々と穴を開けた。


そして、僕の目の前に到達した。

慌てて、僕はスピードを上げて、顔を傾けて、光弾を避ける。


シールドの中には髪が焦げた臭いが充満した。


一瞬しか、見えなかったが、その光弾が何をしたか分かった。


きっと僕のヴァサラと同じ構造だろう。

光弾が空なのは、その中にヴァサラ粒子を吸収するだったのだ。


どんなシールドでも、ヴァサラ粒子が吸収されたら、容易く穴が開く。それは僕が一番しっていることだ。


そして、ヴァサラ粒子で充満した光弾は、通常の光弾となり、殺傷能力が増すのだ。


まさか、あっちも吸収するタイプの技が使えるなんて……流石にそのタイプの対策はしてなかった。


一親さんはそれに気づいたのか、また一発と光弾を放つ。


仕方なく、僕はシールドを解除し、ヴァサラでそれを吸収する。


しつこく放たれる数多の光弾を吸収するが、これにはいつか限界が来る。


直義の場合と違って、ムチで反撃しても、ムチごと吸収され、無力化されてしまうだろう。


僕は初めて不利な状況に立った。勝たないようにしていたのに、今は負けないかつ時間を稼ぐように戦っている。


勝てるように戦ってしまうと、時間稼ぎにはならない。


ある程度の手加減をしながら戦うのは本当に辛いことだ。


さっきよりも、お願いごとを遂行できる確率が減少したが、僕には戦うしかない。前を向くしかないんだ。


そうやって、戦っている内にそのときがきた。


やばい! これ以上吸収できない!!


しかし、間髪入れずに、あの巨大な光弾が放たれる。


僕の時間稼ぎは、一親さんのチャージのための時間稼ぎにもなってしまったのだ。


しかも、その周りに空の光弾が幾百もあるため、シールドわ展開したところで、解消されてしまう。


刻一刻と、光弾は僕に近づいてくる。時間稼ぎは不十分で、僕が負ければ局先輩が救えなくなる。


そう考えたとき、僕は思考変更をした。


負けないかつ時間を稼ぐ戦いをやめて、時間稼ぎかつ引き分けにする戦いに変更した。


ヴァサラを光弾に向ける。


そして、僕はヴァサラから今まで吸収したヴァサラ粒子を全てその光弾にぶつけた。



▷▷▷▷


「てか、どんだけ深くまであるんだよ!」


義貞は愚痴を漏らす。それもそうだ。


あれから十分ほど階段を降りているからだ。


階段は螺旋状になっていて、暗い中、ぐるぐると回っているので、鬱になりそうだった。


それに左右が密閉されていて狭いため、少々暑苦しい。


「あと少しのはずです! 我慢してください!!」


「仕方ないな……」


加賀も気持ちは一緒だった。でも、高氏のためと思えば、そんなもの苦でなかった。高氏のほうが辛いに決まっているし、高氏のほうが苦しいに決まっている。


この程度で、弱音を吐くわけにはいかないのだ。


するとあたりが少しずつ、本当に少しだが、明るくなっていくのが分かった。


「そろそろです!」


そして、ついに地面が見えた。

加賀と義貞はもっと速く階段を降りる。


降り終わると、目の前に大きな扉が現れた。


どうやらその隣にある電卓のような装置に暗号を入れなければいけないらしい。


だが、そんなことこの男がするわけも、させるわけもなかった。


「どけ! 加賀!!」


義貞はヴァサラに力いっぱいパワーを込め、斜めに振り落とした。


すると、扉は、綺麗に切り落とされる。


「やっぱり、義貞さんを選んでよかったです……」


あんな頑丈な扉すら壊すことができる義貞に、加賀は軽く引いた。



「いいから入るぞ」


そう言って、加賀と義貞は中に入った。


真っ直ぐな道の横には左右それぞれ、円柱の水槽があり、中には脳が入っていたり、目が入っていて、とても不気味な雰囲気を醸し出していた。


「あった!」


加賀がそのまま前に進むと、目的のものがあった。


それは卵のような形をした水槽で、周りにはそれの環境を整備するためのコンピュータが張り巡らされてあった。



加賀の目的は、その中にいる人物である。


その人物は、突如現れた、突如姿を消した。


加賀が何度調べても居場所すら分からなかった。でも、やっと分かった。

高氏のためにやっと見つけた。


そこにいるのは、高氏が最も会いたがっていた人物……のはずだった。


「え?」


加賀に衝撃が走る。たしかにあの人物に似ているが違う。加賀の知らない別人がそこにはいた。


そこにいたのは、男性だったのだ……。


義貞が呟く。


「一親……じゃねぇか」



▷▷▷▷


二つの光は力を均衡しあい、空中でぶつかり合っていた。


少しずつ僕の放った光の川が吸収されていくが、吸収されるのと同じくらい、光を供給しているため、力が減少することはなかった。


この状態を保つのは難しい。例えるなら、腕立て伏せで、腕を曲げた状態にして体をキープしているような状況なのだ。


できれば、もっと供給して、早く終わらせたい。だが、それでは時間稼ぎができない。


でも、よく考えてみれば、この状況が続いても、一親さんのチャージの時間ができて、またもう一発と放ってくるかもしれない。


さらに苦しくなったら、時間稼ぎの余裕もできないかもしれない。


どうすればいいか僕は考えた。


そして、結論を導き出した。


僕は光の川を曲げて、相手の光弾の下を突いた。


そうすることで、光弾には上に行く力も働き、そのまま上空に飛んでいった。


それがライトスタンドにあたり、そのところだけ暗くなった。


僕は光の川を解除し、状況を振り出しに戻した……つもりだった。



一親さんは、またパラボラを開いていた。



油断した僕はすぐ様シールドを展開するが、二枚展開したところで、真空状態を作るところまで間に合わず超音波をもろに喰らった。


「う゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」


その音は僕の頭の中をぐちゃぐちゃにしていった。全身に鳥肌が立ち、心臓が驚いて、振動が急激な加速をした。


しかし、よく聞いてみると、その中には、明らかな言葉が入っていた。


「タスケテ」と。


僕がうずくまっていると、足音が聞こえた。


見てみると、目の前に一親さんが立っていた。

僕は顔を見上げる。


一親さんは、無防備な僕を冷たく見下ろしていた。

すると、一親さんは、いきなりミラーシールドを上げて、僕に素顔を見せた。



僕は驚いた。


一親さんの涙ぼくろは、右目についていた。


しかし、この人には、左目についている。


しかも、その人は、短髪ではない。長髪だったのだ。


僕は気づいた。


そう、目の前にいる人は、僕がずっと会いたかった、ずっと話をしたかった、ずっと憧れていた人だったのだ。


「局……先輩……」


▷▷▷▷


「一親? 誰ですか?」


「知らないのか? 玲さんの双子の弟の……」


「安田玲に兄弟なんていないですよ!」


「え? じゃあ、こいつは何者!?」


急に目の前に現れた謎に、二人が戸惑っていると、冷たい声が聞こえた。


「教えて上げようか」


驚いて後ろを振り向くと、そこには……。



「赤橋……守時……」


観戦しているはずの赤橋守時の姿があったのだ。

















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